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第5話

「あーちゃん、何処行くの」 「あーちゃん一緒に行こう」 「あーちゃん、お昼一緒に食べよう」 「あーちゃん大丈夫か?」 「あーちゃん、はい、これ、もっと食べないと健康に悪いよ」 あぁぁぁぁぁぁ!何だこいつ!!! 「わかった。わかったから、せめてあーちゃんはやめてくれ。葵にしてくれ。」 「わかった」 僕は今なぜか屋上までついてきた竜ちゃんとお昼を食べている。おにぎり一個しか持ってきてない僕をみて、足りないと言われ、購買で買ったであろう惣菜パンをいっぱい渡された。 「でもさ、僕少食なんだよね。こんなにいっぱいパンくれても食べきれないよ」 「いい、残ったら俺が食べる」 「はぁ・・・まじか、わかった。ありがとう」 焼きそばパン?初めて食べるわぁ・・・あ、意外と美味しい。 「それ好きか?」 「うん、初めて食べるけど、意外と美味しい」 「そか、よかった」 僕は目の前のイケメンをまじまじと観察する。 僕が美味しいと言うと、少し目元が綻んで優しい顔になる。あー、もうそんな顔されると突き放すものも突き放せないじゃん。 「それより、何で屋上までついてきたの」 「葵とお昼食べたかったからに決まってるだろ」 「僕と食べても楽しくないでしょ。僕愛想悪いし、話盛りあがんないよ」 「いや、葵がいいんだ」 「友達いないの?」 「・・・幼馴染が1人いる」 「その人と食べなよ」 「いや、葵と食べる」 「幼馴染の人可哀想じゃん。僕は1人で静かに食べたいの」 「黙って食べるから、気にするな」 こいつめげないな。いいや、ほっとこう。 ブーブーッ 携帯が鳴った。ん?くーちゃんからだ。 出張予約が入ったらしい。今日は頑張ってお仕事しないとなぁ。 携帯を見ていると目の前のでかいやつの視線が刺さって痛い。 「なに?」 「・・・誰とメッセージしているんだ」 「内緒、教える義理はないよ」 「・・・・・・・・・」 無言怖っ、表情は変わってないけどどうやら少し不機嫌みたいだ。 僕は早くこの空間から逃げたくて頑張って残ったパンとおにぎりを頬張った。モグモグと食べていると、ふと横目で見えた竜ちゃん既にあんなに沢山あったパンを全て食べきっていた。 凄い、胃袋どんだけでかいんだよ。あぁ、でもこんだけ身長も高くてガタイが良ければいっぱい食べるよね。 僕は最後の一口を詰め込んでゴミをまとめて捨てようと思い、ビニール袋を取ろうとしたら横から持っていかれた。 「自分のゴミは自分で捨てるよ」 「いい、俺が捨てる」 「いいってば」 「・・・・・・・・・」 また無言攻撃か。めんどくさいなぁ。 「わかった。よろしくね、僕は教室戻るから、じゃぁね、教室ではあんまり話しかけないでね」 「一緒に戻る」 「嫌だよ、僕トイレとかも行きたいし、ほっといて」 「俺もトイレ行く」 「しつこいよ」 「たまたま俺もトイレ行きたいんだ」 「はぁ・・・もう勝手にして」 僕は諦めてトイレに行って教室へ戻った。竜ちゃんは宣言通り僕の後ろにピッタリ張り付くように一緒に行動していた。 当然クラスの子達は何事だと騒いでいた。あぁ・・・僕の平凡な学校生活を返してくれ・・・ ーーーーーーーーーーーーーーー 終業のベルがなった。 やっと今日の授業が終わった。 僕はいち早く荷物をまとめて教室を出ようとした。 「葵、俺も一緒に帰る」 やっぱり声かけてきた。無視無視。 「葵はそのまま家に帰るか?」 あぁ・・・周囲の視線が居た堪れない。 「はぁ・・・家に帰る。1人で帰るから、一緒に帰らなくていい。また明日」 僕はそれだけ言い残して竜ちゃんに捕まる前に教室から逃げ出した。 小走りで帰路についたが、時々後ろが気になって振り向くけど誰もいない・・・多分これついてきてる?いや、気にしすぎか? 少し休んでから仕事に向かいたいので、僕は気にせず急いで家に帰った。 裏口から入って部屋に上がるとちょうどくーちゃんが身支度していた。 「おかえり〜どうしたの、そんなしょげた顔して」 「くーちゃん〜もう疲れたよぉ〜」 「あら、何よあなた。今日予約入ってるじゃない、体調悪いの?」 「ううん、そうじゃなくてさ。クラスで悪目立ちしてそうでさぁ、気が気じゃないんだよ」 「あんたそんな格好してるのにどう悪目立ちするの」 「いや、なんかね・・・昨日助けたやつが実は後ろの席のやつで、おかしいんだよ、変装してんのにバレたの。やばくない?しかも僕がここに住んでるのもバレてるし、休憩時間になるとめちゃくちゃ喋りかけてくるし、お昼はついてくるし、すっごくクラスで目立ってる。あぁ・・・お陰で僕の平穏な学校生活が・・・」 辛すぎて思わずくーちゃんに抱きつく。そんな僕を拒絶せず、くーちゃんは優しく頭を撫でながら受け入れてくれる。 「はぁ・・・それはなんとも言えないわぁ」 「くーちゃん、考えたんだけど、僕やっぱ一人暮らししようと思う」 「あんた大丈夫なの?一人暮らしなんかして、危ないでしょうよ」 「いや、正直今目立っちゃってるとさ、この制服の格好のままこの遊楽街入っていくのも中々大変だということに気づいちゃった。今までは制服なんてなかったし、私服登校だったから気になんなかったけど、これからはちょっと厳しいかなって」 「それもそうねぇ、でも一人暮らしなんて心配だわ。どうしてもって言うなら丁度いいアパートあるけど・・・どうする?」 「家賃幾ら?」 「そうねぇ、大家出血大サービスで光熱費込みで5万でどうかしら?」 「ここから近い?」 「そうねぇ、徒歩10分ってとこかしら」 「うん、そこにする」 僕は特に悩まず即決した。 「部屋の間取りとか見なくていいの?」 「くーちゃんが大家でしょ?変なところは紹介しないと思うからそこは信用してる」 「もう、この子ったら。わかったわ〜手続きしとくわ、引っ越しは週末でいいわよね?」 「うん、何から何までありがとう、くーちゃん大好き」 「改めて言われると恥ずかしいわね、いいのよ、あんたを拾ったのはアタシ、面倒見るのはあたり前よ、子供は子供らしく甘えときなさい」 ほんとくーちゃんは僕に甘い。申し訳ないぐらい心配かけて・・・くーちゃんはもう僕の親だ。絶対将来いっぱい親孝行するって心に決めてる。 引っ越しするって言っても正直私物はかなり少ないから意外と準備はすぐ終わりそう。 それより出張の準備しないと。僕はしばらく休憩した後お風呂に入って準備をしてから指定された場所に向かった。

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