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ー鼓動ー1
※望視点
台風が島に来て船が転覆してしまってからの翌日。
雄介が戻って来てくれた。
あの台風の中で荒波の中を雄介は、どうやら俺の為に必死になって生きて来てくれたようだ。 あの暗闇の中を彷徨い、こことは違う別の島に雄介と雄介のお父さんである雄一郎さんは辿り着いていたらしい。
その後二人は、この島へと帰還していた。
俺が、その時に見たヘリコプター……。
いつか話した事があった。
『赤いヘリっていうのはなぁ、消防庁のヘリなんやで』
俺はその雄介の言葉を思い出し、何故かその雄介が言っていたヘリコプターがこの島に来て小学校のグランドに着陸した時には、もう俺は夢中で小学校のグランドまで走ってた。 あのいつもはめんどくさいと思っていた坂道も、走るのがあんまり好きじゃない俺でも、その時だけは夢中になって赤いヘリコプターが降り立った小学校へと向かっていたのだ。
本当にもう全くもって根拠なんかない。 あのヘリコプターに雄介が乗ってるなんていう保証だってない。 だけど今来たヘリコプターに雄介が乗ってるって思ったから、気付いた時には走って坂道を駆け上がっていた。
それに心の何処かで絶対に雄介は帰って来ると信じてたからなのかもしれない。
本当に本当にあの時の俺っていうのは、何もそんな事を考えずに無我夢中に走っていた。
そしたら本当にアイツは、そのグラウンドに立っていたんだ。
しかも出会った頃と同じ制服のままで……。
一瞬、幻にしか見えていなかったけど、近付いて手を握ってみると、それは本人で、その手にはしっかりと温もりがあった。
そしてあの懐かしい言葉遣い……。
だから俺は雄介の前で、自分の本当の気持ちを打ち明けた。
「……愛してる」
って。
好きだから本当に雄介の事が好きだったから、これからも一緒にいたいと本気で思った人だったから、俺は心にある本当の気持ちを雄介に打ち明けた。
本気で人を愛するって事、心の中から幸せな気分になれるって事だっていう事も分かった。
それを俺に教えてくれたのは雄介だ。
俺は本気で雄介の事を好きになって良かったと思ってる。
雄介がここに戻って来てくれたって事は、これからもまた幸せな日々が始まるっていう事だろう。
ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー
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