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ー鼓動ー35

「へ? あ、まぁ……そうやねんけど」  雄介はそう言うものの納得いかなそうな表情を浮かべていた。 「確かに俺だって、親父達と東京に行くのは嫌だけどさ、だけど、雄介の事を考えると行かない訳にはいかないだろ?」 「あ、まぁ、確かにそうやねんけどなぁ」  どうも雄介は行きたくなさそうだ。 「そんなに親父の事が嫌いなのか?」 「んー、嫌いではないんだけどな。 苦手っていうんかな? 俺が医者になったって話を確かにしてそこの所は和解じゃないけど、ん、まぁ、どうにかなってると思ってんねんけど、どうもなぁ、苦手なんだよな」 「ま、俺も人の事言えねぇけどな」  と話をしているうちに和也と裕実が起きて来たようだ。 「おはよー! って、今聴こえて来たんだけどさ。 そっか、そうなんだよな。 望達がその定期便で東京に行くって事はさ、俺のお袋に会うって事になんだろ? どうすんだよ」 「お前は、お袋に会わないで済むんだろ? 何で、そこで悩む必要があるんだよ」 「だって、流石に朔望達が俺達の事、話してる可能性があるだろ? って事なんだけどな。 もう、裕実と俺との関係を話しているって事はないか?」 「え? そこっ!?」 「そこもあるっ! で、俺から近い人物と言えば、雄介達だろ? そうなると、お袋の事だから、根掘り葉掘り聞いてきそうなんだけどなぁ? 特にフェリーの中とかって暇じゃん! ウチのお袋って本当にお話好きだから、雄介達の所に来て、話して来る可能性が大って訳だ」 「あー、成る程! 今の言葉で和也はそこまで先を読んだって事だな。 でも、実際にそこまで朔望達が話したって事はないだろ?」 「例え、朔望達が言ってなくても、雄介や望の近くに寄って来て俺達の話を聞いてくる可能性はあんじゃん! そしたら、望達だってめんどくさくねぇ?」 「まぁ、確かに、それはあるのかもしれねぇよな」 「だろ? だから言ってんの!」  和也は俺が座っているソファの背もたれに寄り掛かりながら憂鬱そうに声を掛けて来る。  ……しかも、俺の耳側ででっかい声で言うなって。 「まぁ、でも、朔望も言ってるのか? っていうのも分からないし、まぁ、言ってなかったら俺等が言わなければいい訳だろ?」 「まぁ、そういう事っ!」  そこだけ元気に言う和也。 こうも和也という人間というのは表情をコロコロと変えるもんだったか? と思う。

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