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ー鼓動ー38
そしてスーツケースに荷物を詰めると、俺はベッドの端に座りひと息吐くのだ。
今の時間というのはもう既に十時を指している。 きっと今時間というのは裕実や和也、そして朔望と歩夢というのは診療所の方で仕事をしているという事だろう。
「後は時間になって、東京に向かうだけだな」
「ああ、まぁな」
そう雄介の方もスーツケースへと荷物を詰める事が出来たのか、俺の横へと腰を下ろして来る雄介。
「なんやろな? 久しぶりに望と二人きりになれたような気がするわぁ」
「ああ、まぁ……そうだな」
……そうだ……雄介の言う通りだ。 こうやって、二人だけの時間というのは本当に久しぶりのような気がする。 そう……一ヶ月ぶり。
恋人同士での一ヶ月というのは短くて長く感じるものだ。
この島に来てから一ヶ月も雄介と二人きりになれる時がなかった。
しかもこの一ヶ月というのは本当に色々と考えさせられる事がいっぱいありすぎて、殆ど毎日のように動いていたようにも思える。
初めのうちは退屈過ぎて春坂病院で働いている方が良かったとさえ思っていたのだけど、雄介達と話し合って島の人達ともちょっとずつ仲良くなってきて、やっと診療所に足を運んでくれるまでになってきていた。
「あ! そや! きっと、神様が俺達に休憩してええよ……って言って来てくれたのかもしれへんなぁ」
「クス……そうなのかもしれねぇよな」
雄介のその言葉が何だか可愛くて俺の方は思わずクスリとしてしまっていた。
「そうなんやろな……ま、そう思うて一週間やけど、みんなのお言葉に甘えてゆっくりしてこようや」
「あ、ああ……そうだな」
俺が顔を上げると、丁度いい所で雄介と視線が合うのだ。
ホントこういうのも久しぶりのような気がするのかもしれない。
家事だって雄介自らやってしまっていたから朝だって雄介との時間というのは取れないでいたのだから。
昨日だって二人だけの時間というのはあったのに、朔望達が居たから、こうのんびりとした時間というのは取れなかった気がする。
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