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ー鼓動ー73

「今はな、こういう便利な物があるんやで、このカードに現金さえ入れておけば、ピッってするだけやしなぁ」  そう言いながら雄介は説明してきてくれる。 「でも、もうあまり使う事はねぇだろ?」 「ま、確かにそうなのかもしれへんな。 ま、こういう物があるっていうのは知っておいた方がええって事やんなぁ」 「ま、そうだな」  そう話をしているうちにバスは春坂病院へと到着したようだ。  そして俺達はバスから降りる。 「なんかここに来たのは久しぶりのような気がすんだけど」 「ま、そりゃ、そうやろなぁ。 だってな、もう一ヶ月もここに来ておらんかったしな」  俺の方はあまりにも久しぶり過ぎて思わず建物を見上げてしまっていた。  前と変わらない正面玄関。 入って右側に受付や会計するカウンターがある。  そして左側が診察室。 そこには各科が並んでいるのだ。  雄介は本当に外来のシステムというのは慣れているのか入って診察室がある側に向かうと外科の診察室に診察券を出していた。 「へぇー、そういう風にやるんだな」 「え? あ、まぁな……あ! 望はここで診察受けた事なかったんだっけか?」 「え? あー、そうだな、確かになかったのかもしれねぇな……だから、外来がこういうシステムだったって事知らないんだよな。 ま、通院っていうのか俺的に例え退院しても自分自身で自分の体の事分かってたから調子悪くなった時には親父に診てもらうようにしてたからな」 「そっか、そうやね。 望は前っから医者やったから、自分の体は自分で分かっておったって事やねんもんなぁ」 「退院したら、後は自分次第って事だったしな」 「ほな、このシステムは知らんかったって事か?」 「あ、いや、覚えてるっていうのか、確か前に雄介が通院した時に付き合った気がするんだけどな」 「そうやったっけ? ま、殆どは望が担当してくれてたからな」 「あ、そっか……んじゃあ、お前に付き合った事ってなかったんだっけな?」 「そやろな? ほな、今回はいい機会なんじゃない? ここで患者さんが診察を待ってる人の気持ちっていうのが分かんねんから、こういう大病院やと、ホンマ待ち時間とかっていうのは長いしなぁ、この時間に来ると、もう、人が多くてなぁ」 「あー、まぁ、確かにそうだな。 診察の時間っていうのは九時からなのに八時半でここにある待合室の席がいっぱいになってるんだもんな」 「せやろ? まぁ、今日は予約無しで来ておるから、診察時間は十時半になるとみた!」 「ぇえええ!? そんなに待つもんなのか?」 「そういうもんやで……。 ま、今日は望が居てくれてるから暇じゃないと思うねんけど、望が居らんかったら、この2時間、暇で暇で仕方がない時間やったなぁ」  そう雄介は頭の後で腕を組み既にのんびりモードに入ってしまったようだ。 「だけど、本当に緊急な患者さんがここで待っていた場合にはどうするんだろな? その二時間の間に急変してしまったら?」 「逆に急変したら、ここは病院の中なんやし、直ぐに手当てっていうのは出来るやろ?」 「あ、そっか……」 「普通に診察に来たっていう人は、その待ち時間ずっと待ってなきゃならないって事になるんやって」 「そうだったんだな」

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