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ー至福ー46
雄介曰く、聞いてくれば答えるのはあるのだけど、聞かない限りは答えないという事なのであろう。 だけど昨夜の話については本当に何があっても話そうも無さそうだ。 もうこれでその話に関してははぐらかされて二回目なのだから。
「……で、望さんはどうしたいんです?」
「へ? あ、そうだな……もう少し雄介の事知りたいのかもな」
「では、今日の食事の時にでも聞いてみます?」
「え? あ、そうだよな。 アイツは流石にあまりにも自分の事を話さ過ぎだからな」
「では、そろそろ下に行きませんか?」
流石には話の流れからしてそうなるだろう。 そこは裕実の顔に免じてうだうだとしている場合ではないのかもしれない。
「よっしっ!」
そう言って俺は気合いを入れて立ち上がる。 その後直ぐに裕実の方も立ち上がるのだ。 そして俺は先に階段を降り始める。
いつものようにリビングのドアを開けると俺達の事を待ちくたびれたように、雄介と和也はリビングテーブルで座って待っていたのだ。
「おはよー」
そう先ず言ってきてくれたのは和也で、俺の方も一応そこには反応する。 だって挨拶っていうのは礼儀だからだ。
「おはよう……」
そう言って俺はいつものように雄介の隣へと腰を下ろしその後は裕実も腰を下ろすと、裕実と和也は視線を合わせ裕実の方が先に和也に向かって笑顔を向けていた。 そんな二人の様子を見て俺の方はちょっとハテナマーク状態だったのかもしれない。
「ほな、おかず温めてくるな……」
そう言って雄介の方もいつもと変わらない様子で席を立ち、言葉の通りにおかずを温めに行ってしまうのだ。
その間、裕実は小さな声で和也に何か言っているような気がする。 そう裕実が和也へと近付いてコソコソとしているのだから。
きっと裕実はさっき俺と話をしていた事を和也に話してくれているのであろう。
まぁ、そこは気にしないかな? 寧ろ裕実に話をしたという事は裕実が和也に話すっていう事は分かっていた事なのだから。 後は和也か裕実がどう動いてくれるか? っていう所なのかもしれない。
そして雄介が温めたおかずを運んで来て、みんなで手を合わせて「いただきます」。
すると和也がいきなり、雄介に向かって、
「なぁ、雄介って何が好きなんだ?」
その突拍子もない質問に雄介も俺も飲みかけていた味噌汁を吹きそうになっていた。
本当にさっき裕実に話をしていたまんまだ。 寧ろまんま過ぎる。
「……へ? 急になんなん?」
そう雄介が目を丸くするのも無理ないだろう。 本当に突拍子もなかったのだから。
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