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ー至福ー209

 俺の方は仕方無く、床へと雄介が出した白い液体を吐き出すと、雄介はそれをシャワーで流すのだ。 「顔上げて……」  そう言って俺の顎を片手で上げて、持ち上げると、 「口開けて……」  とまだ怒ったような口調で俺に命令している感じで言って来る雄介。 とりあえず何だか未だによく分かってない俺は雄介の事を見上げると、雄介の言う通りに口を開けるのだ。  そこに無言でお湯を口の中へと入れて来る雄介。 「これで、口の中濯いで……」  そう言うもんだから俺の方は口の中に入ってしまったお湯を床へと吐き出す。  それを数回繰り返した後、 「ほな、これ位で口の中、スッキリしたか?」  もうその頃には雄介の方はいつもの雄介になったのか口調の方は穏やかになっていたように思える。 しかし今のは本当に俺からしてみたら納得出来ない。  とりあえず雄介のおかげで口の中がスッキリとし何も口の中に無い俺は床に胡座をかいて俯き加減で口を開く。 「……何で、俺は雄介のその液体を飲んじゃいけねぇんだよ……」  そうストレートに雄介でも分かるように口にしていた俺。  そうもう雄介と俺の関係というのは恋人同士ではないのだから、聞きたい事は聞いた方がいいのであろう。 いや寧ろ、心の中でずっとモヤモヤとしているよりかは聞いた方がいい関係を保てるなら、聞いてみた方がいいのかもしれないと思った俺は聞いてみる事にしたという方が正しいのかもしれない。 「へ? あ、いや……」  雄介の方は片手を後頭部に当て、視線は天井の方へと向けているのだから、何かこう誤魔化そうとしているのであろう。 これが雄介が何か誤魔化そうとしている時の癖だ。 「それに、何で俺に怒ってたんだ? なんか、そういう所、腹立つんだけど……それに、俺達は結婚しようと思ってる位なんだから、そういうのっていいんじゃないのか? これがもし恋人同士なら、雄介が止める権利みたいなのはあるのかもしれないんだけどさ。 なっ! 俺達って、もう恋人同士じゃないよな? 俺的には、もう、雄介とは婚約相手としか見えてないんだからなっ! だから、俺の方はいつも雄介が俺にやってくれている事をやろうとしてたのに……家族ってそういうもんなんじゃねぇのか? 何でもかんでも信じ合える。 何でもかんでも任せる事が出来る。 そういうのが夫婦っていうもんなんじゃねぇのか?! 俺は本当にお前の事が好きだから、婚約した。 だから、雄介の方も俺の事を信じて欲しいと思ってるんだけどなっ!」  俺は真剣な瞳で雄介の肩を両手で掴みこう何か訴えるかのように言うのだ。  そう俺の方はもう雄介と結婚すると決めた。 だから何でもかんでも雄介のことを受け入れると決めたのだから、寧ろ、今の雄介の行動が許せないといった方がいいのかもしれない。

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