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ー未知ー25

「そうだったんだな……。 やっぱ、そこは聞かなくて良かった部分なのかもしれねぇな……」  と俺は流石に気まずそうにヘッドレストと頭の間に両腕を挟んで言うのだ。  自分でも聞いてしまって若干ショックを受けてしまった位なのだから。  そうもし俺じゃなくて雄介がそうなってしまった場合、雄介よりか俺の方が計り知れないくらいショックを受けてしまうだろう。 そんなのが過ったからなのかもしれない。  本当に逆に雄介っていうのは凄いと思う。 俺がそんな状態になってしまっても、レスキューの訓練に行ったりして日常方面では割と普通に過ごせていたのだから。 「な、もし……お前が、記憶喪失になってしまったら、きっと、俺はお前のように普通に日常なんか送れないと思うぜ……」  一瞬その言葉に雄介は俺の方へと視線を向けようとしたようなのだが、今は運転している事を思い出したようで、一瞬で顔を正面へと向かせ、 「……ん?」  と何だか気になっているような気になってないような声を上げるのだ。 「だってさ、雄介の場合には、俺が記憶喪失になってしまった時にだって、ちゃんと仕事はしてたんだろ?」 「あ、ああ……まぁ、一応なぁ……そん時は、まだ、望は病院やったし、何かあったら寧ろ和也が電話してきてくれるとも言っておったしな。 だから、安心出来たっていうんかな?」  「あ、そういう事か……」とそこで納得してしまう俺。 確かに雄介一人ではなく病院に和也がいたから何かあったら連絡するとでも聞いていれば逆に仕事に打ち込んでいた方がいいとでも思っていたのであろう。 だから雄介は安心出来たのかもしれない。 「ホンマ、あん時の和也には助かったわぁ……。 だってな、まだ、和也はあの時位まで望の事を狙っておったように思えたんやけど……ホンマは違っておったからな」  「へ? そうなのか?」という表情を雄介の方へと向けるのだが、雄介の方は運転中で今の俺の表情は見えてなかったのかもしれない。  それにその話もあまり聞いてないようにも思える。 だから俺は、 「そういやさ、初めてお前とプライベートで会った時に、軽く俺達って喧嘩しただろ? で、次の日早くに雄介が帰ったやつ。 それで、暫く俺達の中で連絡さえもしなかった時の話だけどさ……俺の方は和也に言われてお前に連絡したけど、お前は暫く無視してただろ? そん時どうして急に俺に連絡して来たんだ?」 「あ、それなぁ……」  またまた雄介が項垂れてしまっているようにも思えるのは気のせいであろうか。 でも、俺達っていうのはこれから結婚するのだから、やっぱり気になっていた事は全部聞いた方がいいと思った俺は容赦なく聞き続ける。 それにもう隠し事だって嫌からだ。

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