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ー未知ー78

「も、もう、大丈夫か?」  何だか急に雄介が俺の方へと顔を上げて来てまでそう聞いて来た。  そんな雄介からの質問に俺の方も気持ち的に顔を上げる。 そして目を見開きながら雄介の事を見つめ、 「……へ?」  と言ってしまっていた。  すると視線が合ってしまった俺達。 その瞬間、俺の心臓が気持ち的に跳ねたのが分かった。 そんな俺に雄介の方は笑顔のままだ。  本当にあの笑顔に俺の方はいつも救われているような気がする。 本当に雄介という人物は俺に対しては常に笑顔のような気がするからだ。 「やっぱ、望じゃ、それだけじゃ、通じんかったか……」  そう半分は独り言のように呟くと、雄介は今度ちゃんと俺の方に向けて、 「もう、挿れても大丈夫か?」  そう今度はストレートに聞いてくる雄介。  確かにもう雄介だったら、ストレートに聞いてきても怒るなんてことはしないのだけど、流石に俺だってそんなにストレートに聞かれてしまうと恥ずかしくなって来る。  だからなのか俺の方は雄介から視線を離して、顔を赤くしながら、 「あー、そこは、もう、雄介がいいって思うんだったら、いいんじゃねぇのか?」  そうちょっとそこは自信なさげに答える俺。 「そっか……」  その雄介の答え方に何だか残念そうに聞こえるのは気のせいであろうか。  そんな雄介に今度は俺の方が心配になってしまい、半身を起こすと真剣に俺は雄介の顔を見つめるのだ。 「何でだよ……何で、そんな残念そうに答えるんだよ……」  俺の方は雄介が逃げないようにと両腕まで掴んで雄介の事を見つめるのだった。 「え? あー……」  きっと雄介の中で俺がこんな風に責めて来るとは思ってなかったのかもしれない。 そう寧ろ雄介の方が、俺の今の行動に戸惑っているようにも思えるのだから。  そう俺の場合には、本当にこういう行為に関して確かに今まで逃げて来た。 だけど今はもう逃げるなんて事はしない。 雄介と婚約寸前まで来てるのだから、本気で話し合いをするもんなのであろう。 と思っているからだ。  恋人だった時には、相手と合わないと思えば、特に話し合う必要っていうのは無く、合わなければ別れればいいだけの話なのであろうが、今の俺たちっていうのは婚約までしている状態なのだから、もう結婚は秒読み状態。 なら、そこはもう真剣に話合わないといけないだろう。 寧ろ一番本音で話し合う事が出来る位の相手なのだから。 「あ、いや……そういう意味じゃなくてな……」  そう俺から視線を離してまで答える雄介。 それはある意味、どっちなのであろうか。  まさか俺がここまで真剣に話そうとするとは思ってなくて困っている状態なのか、この話から話を逸らそうとしているのであろうか。 その二点だろう。

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