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ー未知ー157

「おお、ええよぉ……」  そう言うと雄介は再びその部屋内をゆっくりと歩いて、見渡すように朔望にその部屋の玩具を見せているようだ。 『ホント、マジでこんなの玩具があったんだねぇ。 って、ここって、確か兄さん達の為に作った家だったんだよね? しかし、そう考えると、父さん達って、兄さん達の事は本気で認めてたって事なんだよねぇ?』 「あ、ああ……ま、そうなんやろな? でもなぁ……」  そこで雄介は言葉を一旦止めると、今度は俺の方へと視線を向けるのだ。  その視線に一瞬俺の方は何が何だか分からなかったのだけど、その一瞬で俺の方も考えると、雄介が俺に何を振って来たのだかが分かって来たような気がする。  きっと朔望達はあの事を知らないだろう。 そう俺達の父さんと雄介の父さんが知り合いだったっていうことを。 あ、いや、前にその事について朔望とは話をして事があったのかもしれない。  そうだ。 朔望が一回、その話をした時に、嘆いたのだから。  そう『その消防見学の時、本当は僕も行く筈だったのに、前日かなんかに怪我をして行けなかったんだよね』っていうのを今俺の中で思い出す。  だからなのか、俺は雄介に向かって、 「何言ってんだよ。 俺達の父さんとお前の父さんの話、朔望の方は知ってると思うぜ」  と雄介にだけ伝わるような小さな声で言うのだ。 「あ、そうやったなぁ……」  と後頭部を掻きながら俺の言葉に答えると、今度は朔望がいるであろう、電話の画面の方へと視線を向け、 「なぁ、朔望。 だって、ほら前に、俺の親父と望ん所のお父さんと知り合いやったって言うたやろ?」  そう言われて、朔望の方も考えて、 「あ、ああ! 確かに、そうだったねぇ。 じゃあ、兄さん達の方は、もう、父さん達の公認っていう訳だ」  そこで朔望が今言った言葉で思い出す。  確かに父さん達には俺と雄介との恋人同士については公認になってはいるのだけど、結婚の方も報告しないとならないのではないだろうか?  とりあえずそういうのは後で考えよう。   本当に俺達の頭の中っていうのは、いつも考える事で渋滞してしまっているようにも思える。  本当に頭の中には全く余裕がないように思えて来る。  そこに朔望がまた入って来て、 「ま、いいから、とりあえず、色々と見せてよー。 今はこっちの気分なんだからさ、父さん達の事は後、後!」  ま、流石は朔望。 切り替え上手というところなのかもしれない。 「あー、そやったな。 ほな……スマホで周り映すからなぁ」  そう言って雄介は周りを映し始めるのだ。

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