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ー未知ー184

「まぁ、そうなのかな?」 「そういうことやって……」  そんな平和そうな会話をしていると、さっき注文した品物が運ばれてくる。  本当にハンバーグとスパゲッティを頼んだ雄介の前には、その二つが並んでいた。 「本当に、マジで、それ食べるのか?」 「え? これくらい、普通やろー?」 「んー……」  その雄介の言葉に、俺は黙ってしまう。そう、俺では考えられないような量だからだ。  とりあえずその話は終わりにして、 「本当に、雄介は美里さんに秘策みたいなのはねぇのか?」 「ん? ある訳ないやん……。もう、考えたってしょうがないんやし、そこは、もう、なるようにしかならんで、ええと(ちゃ)うの?」  そのわりと何も考えていないような答えに、俺は目を丸くするのだった。  さっきまであんなに悩んでいたように思えた雄介だったのだが、今ではもう何も考えていないかのような態度に、こちらが拍子抜けしそうだからだ。  雄介がそこまで言うのなら、きっと大丈夫なのだろう。いや、寧ろ雄介の場合には本当に何も考えていないような気もするのだが、雄介が大丈夫だというのなら、そこは雄介に任せるべきなのかもしれない。  俺はそこでひと息吐くと、そんな雄介に従ってという訳ではないが、考えても仕方がないと思い、体全体の力を抜くのだった。  そこからの俺は、久しぶりに体から力が抜けたような感じになる。  何かこう、ふわふわというのか、心が今この時間だけ軽くなったように思えた。確かに、こうして息抜きみたいなのは必要なのかもしれない。今までの俺たちには本当にそういう時間がなかったのだから、こうして雄介の提案でファミレスに来てよかったということだ。  それに普通の主婦だって、たまには息抜きするために、友達とお喋りしながらファミレスでゆっくりするのも息抜きの一つなのだろう。  それに今の俺たちからしてみれば、「嵐の前の静けさ」なのだから、心を落ち着かせておくのもいいのだろう。  なら今は先のことを考えずに、食事の時間を楽しんだ方がいいのかもしれない。  もしかしたら今の雄介は、俺にそんなことを教えてくれているのだろう。  それに、食事をしている時の雄介の顔は、幸せそうだ。  いや、寧ろ人間というのは、食事の時間が幸せな時間なのかもしれない。美味しいものを沢山食べて、満足して、仕事に行ったり、寝たりするのだから。  そういう日常が当たり前ということが、本当の幸せなのかもしれない。  目の前に幸せなことがあるのに気付かなかった。きっと、それはいつも忙しかったからなのだろう。

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