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第16話
ガラガラ
「あっ」
扉の開く音と小さな声が一緒に聞こえた。俺と空の席は廊下側の1番前の席だ。なので教室の出入り口に近く、今入ってきた奴の声も自然と聞こえた
扉の開く音に反射的に顔を向けるとそこには活発そうというかちょっとバカそうな男子がいる。そしてなんかこっちの方を見ている。俺の知り合いじゃないから歩の知り合いか?
視線を向けると首を横にふるふると振っているから違うっぽい。って事は
「あっ海斗おはよう」
やっぱり空の友達だったんだな。どうやら海斗という名前らしい
「はようっす。ってか空もう友達できたのかよ。珍しいじゃん」
海斗の口ぶりからするとやっぱり空は大人しい性格っぽいな
「あっ、うん。この2人が話しかけてくれたんだよ。えっと犬伏実弘君と伏見歩君だよ」
とりあえず紹介された事だし俺も自己紹介するか
「俺は犬伏実弘!長いから弘でいいよ!」
空の時と同じでワンコキャラを装う。もう、慣れたもんだ。まぁ、歩には負けるけど
「伏見歩です。空君と一緒に仲良くしてくれると嬉しいかな。弘とは中学の友達だよ。僕も歩でいいよ」
こいつが委員長モード 外行き用を解除するのって中々ないんだよな。しかもそれ。解除する時もめちゃくちゃ無駄に高い警戒心を持ってるから結構珍しいんだよな
「弘と海斗だな。俺は山本海斗よろしくな!俺も海斗でいいぜ」
「よろしくな!」
「よろしくね」
海斗か。元気そうな奴だしなんか面白いことやってくれそうだな。なんかやらかしてくれないかな。引っ掻き回すのが楽しそうだし。悠真も同じクラスだし、退屈しないで済むといいな
「あっ、弘君、歩君。海斗はちょっとうるさくなる事があるけどいい子だからどうか広い心で見て上げて」
「ちょっ、空。その言い方じゃ空が俺の保護者みたいじゃん」
正直俺も同じ事を思った。視線だけを歩に向けると俺と同じような反応をしている
「……え?中学の頃に何度か既に似たような事してた気がするんだけど?」
「うわぁ!それを言うなよ!」
2人のこのやりとりを見るだけで本当に仲がいいんだと言うことが分かる。そんな様子を見て
「ふふ、2人は仲がいいんだね」
微笑みながらのほほんと呟いた歩に俺も
「だね」
とだけ短く返す。だが歩は直ぐに何かを思い出した様な顔になって
「とりあえず海斗君。僕もまだだったし話し込む前に鞄を置きに行こうよ。弘も席についたら」
「それもそうだな」
途中で海斗が来て話し込んだからちょっと忘れていた
歩と海斗は自分の席を探しに後ろの方に行く。俺も空の隣の自分の席に座ろうと動きだすと
「はい。弘くん。ついでに筆記用具とか出したておいたら」
「おっありがとう空。そうだね。ついでだし出しとくこっと」
空が俺の席の椅子を引いてくれたのでそのまま椅子に座り、言われた通り鞄から筆記用具を出して机の上に置いていると鞄を置いてきた歩と海斗が戻ってきた
「なぁなぁ!俺と歩隣の席だったんだぜ!さっそく仲良くなった奴が近くだったからよかったわ」
「お、マジでラッキーじゃん」
知らない奴よりは多少は関わりがある奴の方が気が楽だよな。まぁ、まだあったばかりだから似たようなもんかもだけどある程度話していい雰囲気になったからこっちの方がいいよな
「確かにそうだね。けどそれを言うと弘と歩君もだね」
あっ言われてみれば確かに俺達もそうだったな。空って歩に似てるからなんとなくだけど仲良くなれそうな気がするんだよな。それに歩と違って腹黒くなさそうだし歩の時みたいな失敗はしない
「まぁ、まだあったばかりだけどね」
「あはは。気にしない気にしない。それに空はいいだ奴から俺は仲良くなりたい!」
「おっ、弘その通りだぞ!空はいい奴なんだ!」
「ちょっ、海斗!そう言うのは本人がいないところでしてよ!恥ずかしいからさ」
「あははなんだかさっそく賑やかになりそうだね」
あれ?今日は珍しいものをよく見るなぁ。というか珍しい歩か?
いつもだったら海斗みたいな奴がいると大体本心では面倒くさそうにしてるいるは
なのに今の表情は珍しく言葉通りというか本心だけを言っているように思える。席に荷物を置いていった時になんか話したのか?後で聞いてみよ
その後も少し雑談を続けていると歩と俺にとっては聞き覚えのある。いや俺にとっては聞いただけで心臓がうるさくなる人物の声が聞こえた
「あっ。よう弘」
「おはよう!悠真!」
そう。俺と歩の中学のクラスメイトで今日から付き合うことになった俺の彼氏の佐藤悠真だ!
「…おはよう。悠真君」
「おう。おはよう悠真」
ゲイの俺と歩とは違って悠真はノンケだ。だから正直上手くいくのは分からない。けど歩に相談をして背中を押されたんだ
正直今でも少し怖さがある。けど俺はやらずに後悔するくらいなら思いっきりやってみるって決めたんだ。好きな人との高校生活を送る。どうせなら最っ高の思い出にしないとだよな、だからやりたいようにやってみよう!
「あ、悪いんだけど入らせてくれないか?」
俺が密かに1人で悠真との学校生活に決意を固めて気合いを入れていると知らない声が聞こえる
あぁ、そういえば今いるのって入り口の直ぐそばにある俺と空の席の周に集まってるから入ってこようとする奴の邪魔になるよな
「あ、悪い。入り口のところだから邪魔だったな」
「あぁ、いいっていいって。あんまり気にしないで大丈夫だから」
その声と共に入ってきた男子生徒の顔が見える
「……っ!」
入ってきた奴は活発そうな好青年っていう印象を受ける。笑顔がとても似合っていて歩とはタイプが違うけどきっとモテるだろうなというのが分かる
「っていうかこれからクラスメイトになるんだし、仲良くしてくれよ」
「あぁ、よろしくな」
悠真とのやりとりからして性格もよさそうだ。きっとクラスの女子の大半は歩とこいつ狙いになるだろなというのが想像できる
けどなんでか分からねぇけど、俺はこいつがあんまり好きになれそうにない。勘だけどなんか怖いんだよな。っていうか気持ち悪いって感じか?多分だけどこの感じからすると歩とは違うっぽいから腹黒ではないと思う
あれは半分素だし性格悪いの隠してるだけだで、その隠してるのだって優しいところは変わらない
………あっ、よく見たらこいつ笑ってねぇじゃん
今入ってきたこいつは顔はいかにも好青年なキラキラした顔をしてるのに目は全然笑ってねない。キレたときの歩とも違う
なんていうか感情が見えない。目だけがその辺の景色を見てただぼうっとしてるみたい感じだ
これ多分明るく振る舞ってるだけで実際はどうでもいいって感じの奴だ
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