22 / 83
逆愛Ⅲ《嵐side》2
竜と買い物したあと、寮に着いたのは18時だった。
竜はバンドメンバーと練習があるから途中で別れた。
自分の部屋に向かうと、ドアに寄りかかって腕を組んでいる人物がいた。
「よぉ、大空」
「洸弍先輩っ」
何でここにいるんですか、と聞けるような状況じゃない。
かなり怒っている様子。
「お前今日何してた?」
洸弍先輩には、誠とカラオケってことにしてたんだよな。
「あ…、誠とカラオケ」
「だよな?天野とカラオケ」
俺の顔を覗き込んで、目を合わせる。
なんか…マズイ雰囲気なんじゃないか。
「俺は今日その天野と一緒にいたんだよ」
「え?」
しまった。
誠に口裏合わせるように連絡するの忘れてた。
まさか洸弍先輩が誠と会ってたなんて。
「俺の誘い断って嘘までついて、お前何処にいたんだよ」
ヤバい。
かなり怒ってる。
当然だよな、嘘ついたんだし。
「すいません、嘘ついて…」
「別に。お前の嘘のおかげで今日天野と仲良くなれたし」
俺の知らないところで、洸弍先輩が誠と仲良くしてるのを想像しただけで腹が立つ。
「で、お前は何の用事があったんだよ?」
「あ、竜と…」
「竜?…あぁ、帝真か」
誕生日プレゼントを買いに行ったなんて言えない。
「なるほどな。…お前の好きな奴って帝真なんだろ?」
「え?」
「あいつ雨月のこと好きだもんな。叶わぬ恋なわけだ」
俺が竜を好き?
何を言い出すかと思えば。
「いや、違…」
「別に隠す必要ねぇだろ。誰にも言わねぇし」
何で誤解されてんだ俺。
マリちゃんを好きだと勘違いされたと思えば、次は竜かよ。
俺はアンタが好きなんだ。
「お前、俺と帝真を重ねてんだろ?髪だって同じ青色だし、体格だって似てるし」
「重ねてないですよ!」
「俺だってお前を綾くんと重ねてるわけだし、お互い様だろ」
会話にならない。
俺の言葉が言い終わる前に、洸弍先輩は次の言葉で俺を攻める。
「この前目隠し取ってお前とヤッた時、別にお前じゃなくてもいいと思ったし」
「どういう意味ですか?」
「誰だっていいんだよ。お前でも天野でも抱いてくれるなら誰でもな」
俺は、洸弍先輩の特別だと思ってた。
神威の身代わりになれるのは俺だけだって。
―…そう思ったのに
「天野優しいしな。冷静だし、単純なお前とは違…」
誠の話を淡々とする洸弍先輩にムカついた。
辛さと腹立ちが混ざり合って、おかしくなりそうだ。
無意識に部屋の鍵を開けて、洸弍先輩の腕を掴んで俺の部屋に引きずりこんだ。
ともだちにシェアしよう!