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逆愛Ⅲ《洸弍side》5
俺の足に力が入らず、その場に腰を下ろした。
「何なんだよお前…強引過ぎだっつの」
「すいません。…誠に負けたくなくて」
「何の勝負だよ」
天野に負けたくない?
こいつ、もしかして俺が天野に抱かれたと勘違いしてんのか?
「シャワー貸せ」
「あ…はい」
俺はそのままバスルームに向かった。
申し訳なさそうな顔しやがって。
散々ヤッておいて、いつも最後は犬みたいになりやがる。
だから優しくしちまうんだよ。
「おい」
俺は振り返って言った。
「天野とは本屋で会って、喫茶店行っただけだからな」
「え?」
そう言い残してバスルームに入った。
全く、世話のやける後輩だ。
「なんであんなヤツ好きになっちまったんだろうなぁ…」
俺はひねくれてて、あいつは単純だから。
あの素直さに惹かれてるんだ。
ただ、大空が帝真を好きというなら応援は出来ないと思った。
大空の全てが帝真のものになると考えるだけで嫌になる。
日に日に大空を好きになっているから。
大空が離れてしまうのは怖い。
考えただけでこんなに胸が切なくなるなんて。
好きになった人はいつも違う人を見てる。
俺の運命なのかもしれないな。
「洸弍先輩、タオル置いときますね」
「あぁ」
「シャワー浴び終わったら夕飯食べに行きましょう。腹減りまくりっす」
この距離でも心地良い気がした。
俺が誰かを求めても、手に入ったことなんてないんだ。
だからせめてこの位置だけは譲りたくない。
大空は俺の居場所だから。
だから、せめてこの位置だけは俺のものでいいだろう?
これ以上求めないから、離れていかないで。
「美味い!もっと持ってこよう」
「お前なぁ…バイキングなんだから1皿完食してから行けよ」
だから、
「いやいや、あの料理残り少なかったから全部取ってきます」
「うぜぇ」
その笑顔を絶やさないで。
錯覚でもいいから、俺のために笑ってると思わせてくれ。
お前の恋が実るまでは、この位置にいさせて。
無理な話だけど、
出来れば、ずっと―…
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