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逆愛Ⅴ 0.5《嵐side》

毎年恒例の林間学校。 終業式ぶりに洸弍先輩に会った。 会話はないけど。 ほんの2ヵ月前までは、まだ体の関係だった。 「同情したくないからこの関係終わりにしよう」と言われてから2ヵ月が過ぎた。 まともに話しさえしてない。 でも俺はこうして洸弍先輩を見てるだけで充分だ。 「缶蹴り?」 「そうだよ!だって交流を深めるんだからゲームしないと」 つーか、プログラムには無いのにいつの間にか缶蹴りやることになってるし。 古蒔楼くん言い出したらきかないからなぁ。 さすがマサやんの甥っ子。 「鬼は僕ね!マコちゃんにも、嵐くんにも勝つ」 「手強い子が鬼かよ…」 「手加減してやれよジロ」 「やーだよ!嵐くん、MY学園の人が一人でも僕に捕まったら豆腐食べてね♪」 いや、無理! 吐く自信あるし! 「ってわけだから頑張れ嵐」 「誠…お前楽しんでるだろ」 ぜってぇ負けねぇ。 古蒔楼くんが鬼になり、缶蹴りスタート。 ある意味、誠も鬼。 「いーち、にーぃ…」 全国の中学生で短距離が1位の古蒔楼くんに勝てるわけない。 まぁ、50mでの話だけど。 とりあえず豆腐だけはマジで勘弁。 どこに隠れようか… 「!」 洸弍先輩だ。 あんなとこで突っ立って何やってんだ。 振り返ると、古蒔楼くんはあと少しで10数え終えようとしている。 仕方ない。 そう思って洸弍先輩の手を引っ張った。 「何やってんすか。早く隠れないと負けますよ」 「大空…」 俺を嫌いなのは分かってる。 だけど負けたくないのを言い訳にして、久しぶりに貴方に触るくらい許されるだろうと思った。 そして柱に隠れて壁側に洸弍先輩を押し付け、俺が覆い被さる状態になった。 やばい。 洸弍先輩を見れない。 「うちの学校で誰か一人でも負けたら豆腐食わせるって言われたんで、絶対勝ちましょう」 俺は古蒔楼くんの様子を見ながら、洸弍先輩を見ないように言った。 『負けたくない』なんていうのはどうだっていい。 洸弍先輩と同じ空間に居たかったから。 このまま抱きしめてしまいたい。 「マジで古蒔楼くん鬼っすよ。色んな意味で…」 「短距離走は全国の中学で1位だからな」 「まぁ…50mは俺でも負けますよ。ただ、200mからなら俺は余裕で勝てますから」 会話が続いたのが奇跡に思えた。 嬉しかった。 俺を嫌いなのに、 同情なのは分かるけど、 それでも嬉しかった。 洸弍先輩は黙ったまま俯いている。 気分でも悪いのかな? 「洸弍先輩?」 顔が見たくて、洸弍先輩を呼んだ。 俺を見る顔が、今にも泣き出しそうで驚いた。 「コンタクトが落ちて目が痛ぇ…」 …予想外の答え。 「大丈夫ですか?」 だからあそこで立ち尽くしてたのか。 涙目になっている。 俺は左手で洸弍先輩の頬を触った。 勢いで触ったものの、洸弍先輩をこうして間近で見るのは久しぶりだ。 綺麗な顔だな。 俺なんか、相手にされてたのが奇跡だ。 見つめ合ったまま沈黙が続く。 好きで好きで、 愛しすぎて、 嫌われても諦められない。 明確な理由が知りたい。 俺を嫌いな理由がー… 「洸弍先輩、俺のどこが嫌いなんですか?」 洸弍先輩は黙ったまま俺を見つめた。 理由によっては、諦められるかもしれない。 そう思ったから。 だから言わないなんて許さない。 「10数えても言わない場合はキスします」 嫌いな奴からキスなんてされたくないだろうと思い、咄嗟に出た言葉。 でも、洸弍先輩は何も言わない。 俺との空間が嫌なのか? どこか切なくて、苦しい表情をしている。 俺が原因なのか? 面倒な後輩だと思われてるだろうな。 それでも、俺はー… 「嵐くん見ーっけ!」 「マジかよ!」 俺はこの場を去り、古蒔楼くんを追いかけた。 やっぱり俺は、洸弍先輩を諦められそうにない。 好きすぎて、 嫌われても、 洸弍先輩しか見えない。 あぁ、 しばらくはまだ片想いの生活が続きそうだ。

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