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第2話 出張先で。2  近江ヒロキside

 近江(おうみ)がシャワーを終えて浴室を出ると、コンビニで買った缶ビールを全部飲みほして、壁際に置かれた小さなテーブルに、突っぷして眠る神田の姿が目に入る。 「神田君、さっさと汗を流してベッドで眠れよ?」  ホテルにチェックインした後、すぐにビールを飲みたがった神田のために… スーツにしわが寄らないよう、2人は部屋に備え付けられた部屋着に着替えてから祝杯(しゅくはい)をあげた。    思わずフゥ―――ッ… と近江はため息をついた。 <ああ、クソッ! シャワーを浴びた後だから、あんまり神田に近寄りたくないのに!!> 「ほら、神田くん! 起きてシャワーを浴びに行けよ!?」  肩をたたいて揺すっても起きない神田に、もう一度大きなため息をもらして、近江は起こすのをあきらめた。  眠りこける神田をそのままにして… 近江は自分が眠る側のベッドの上に置いていたカバンを開き、中からローションを取り出した。  オメガ用に開発された、フェロモンを拡散させないようにする特殊なローションで、抱き合ったりしなければ、アルファが相手でも簡単にオメガだと見破れないという優れモノだ。 <まぁ良い! 先にローションを塗ってしまおう!>  ベッドに座り、乳白色のトロリとしたローションを手に取り、近江はたんねんに首筋へと塗り込め、部屋着を腰まで下ろし首の付け根から鎖骨(さこつ)へ、そして胸へと順番に塗って行く。 「近江センパイ…?」  泥酔していると思った神田に呼ばれ、近江はハッ… と息をのみ振り向くと… 目の前に呆然とした神田が立っていた。  素足で絨毯(じゅうたん)の上をぺたぺたと歩いたから、近江の耳に神田の足音が聞こえなかったのだ。 「神田君… 眠ってなかったのか?!」  緊張から、近江の声はひどくかすれていた。 「センパイに、たたかれて起きたけど… 眠くて…」  ゴクリと喉ぼとけを動かし、神田がつばを飲み込む音が… 神田の緊張を表すように近江の耳にも大きく響く。 「神…田君…?」 「眠いのに… 何かすごく良い匂いがして、オメガのフェロモンだよね? これってセンパイのフェロモン…?」  神田の視線が、近江の顔から細い首筋へ移り、鎖骨から薄い胸へと落ちて小さな(へそ)まで落ちると… 再び胸に戻り… ゆっくりと… ゆっくりと…   緊張で動きが止まってしまった近江の、ツンッ… と(とが)って紅く色付いた乳首で、神田の視線がピタリと止まった。  「神田君…?」 「ねぇ… センパイ…」  ジッ… と乳首を見つめたまま神田は、手を伸ばし近江の部屋着をギュッ… とつかんだ。

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