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第9話
「美味しい……美味しいけど……」
一人で食べるご飯がこんなにつまらないのかと少し複雑な気持ちになった。
なぜか今日は全然人がいなくて余計寂しいというか。
紅生姜が欲しくて手に取ろうとした時、
「「あっ」」
隣の人と手が触れた。
その人も紅生姜が食べたかったみたいでどうぞと言うといやいやお先にと言ってお互い譲り合っている状態だ。
帽子とサングラス。この人どこかで見たことあるような……?
「って……爽良!? 爽良じゃん!?」
莉羽と同じグループの神崎爽良だった。
どんだけ隠してもオーラだけは隠しきれていない。
シーっと言われて自分の口元を咄嗟に押さえた。
「す、すみません……つい」
「大丈夫。もしかしてLieNのファンだったりする?」
「はい!ファンです!」
「ちなみに誰?莉羽?」
「はい!莉羽です!尊いです!」
はっ!やばい!こういう時は嘘でも爽良だって言うべきだろ。
でもまあ嘘はつけないし……僕の一生の推しは莉羽だし……
「やっぱ莉羽か〜。でも男の子のファンなんて珍しいよね。莉羽のどこがいいの?」
「全てです!全てが尊いです!」
「アハハ、そっかそっか。キミ面白いね。名前は?」
「高月揺瀬です!」
「揺瀬くんねえ……莉羽もいいけど僕のことも推してくれたら嬉しいな」
な、な、なんなんだ!? この眩しい視線……!
ついつい揺れ動きそうになってしまうじゃないか!僕は莉羽を推し続けて何年だと思ってるんだ!でも……アイドルなだけあって格好良い。
「莉羽の次に爽良くんが好きです!」
これは冗談じゃなくて本当。
莉羽がいなかったら間違いなく僕は爽良を推してる。
「僕LieNの中で1番人気ないのに?」
「別に僕は莉羽が1番人気だから推しているわけじゃないですよ?爽良くんだって莉羽の次にちゃんとアイドルしてるなあって思ってるし。ショタボな歌声が魅力的で僕は好きです」
やばい、つい喋りすぎてしまった。
まさかこんな所にLieNのメンバーがいるとは……
で、なんで爽良はそんな驚いた顔をしているんだろう……?
え!まさか僕、変なこと言っちゃった!?どうしよ、どうしよ。よし、死のう!
「ごめんなさい!死んで詫びてきます!」
「ちょっと待って!待って!違うって。少し驚いちゃってさ?僕のことそんな風に見てくれてる子がいるんだあって。嬉しくて驚いただけだから」
あー良かった。傷付けたりしたらどうしようかと本気で焦った。
「これあげる」
「え!?A席のチケット!?いいの!?」
「特別ね。来週あるから絶対見に来てね。じゃあね」
り、り、莉羽を……近くで拝めれるうううぅ!!!幸!爽良に幸あれ!
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