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第00話 

★ご注意★ このお話は拙作『ナツノヒカリ』続編となっております。 初めての方は https://fujossy.jp/books/12399 を読んでからどうぞ。 長すぎるのでまあ、アレですけど……。 ----------------------------------------- 「げえ~マジかよ~~」 スマホチェックしていた真島がそう言って机につっぷした。 真島・灰谷・佐藤・田中、略してマジハイサトナカ。 いつものメンツで学校の昼休み、お腹も満たされ、まったりしている時の事だった。 「なになにどした? 真島?」 好奇心旺盛な佐藤が目をキラキラさせて声をかける。 「バイト先の店長から。今日もシフト入れないかって」 真島は顔も上げずにそう続ける。 「よっ!勤労少年!」 「よっ!副店長!」 早速サトナカから声が飛ぶ。 「ぐわ~いやだー。ゲーム~。ゲームして~~」真島は手足をバタバタさせた。 「子供か!自分で言ったんだろ。空いたシフト全部入れますって」 佐藤のめずらしいド正論だった。 「言ったけど~今日行くと五日連続になんだよ。イヤだ~~」 本当にイヤなのだろう、手足バタバタをくり返す。 「なになに? 灰谷きゅんの取り立て、そんなにキツいの?」 「よっ、ヤミ金ハイタニくん!」 この夏、真島と灰谷は原付バイクを購入した。 その費用は灰谷が立て替えた。 元々バイト代や小遣いを貯めたものだし。置いておくのも真島に貸すのも変わりはない。 いつでもいいよと真島に言った。 それに何より、自分が誰にも相談せずにしたことなのだ。 夏休み、一人で旅に出た真島が帰ってきた時、喜ぶかなと思ったから。 いや、早く帰りたいと思ってくれたらいいなと思ったから。 そんな単純な動機だった。 案の定、真島は喜んだ。メッチャ喜んだ。 だが、真島の母・節子にとって、事はそう簡単なことではなかった。 何せ真島が内緒で原付免許を取ったことがわかった時も、バイクは危険だと買わせなかったぐらいなのだ。 事後承諾をねらったが、話し合いはモメにモメた。 サトナカの灰谷イジリに「ちげえよ~」と真島がやっと顔を上げた。 「灰谷には母ちゃんが返したの、バイク代は。で、オレはいま、母ちゃんに返してんの」 「んじゃ、そんなに急がなくてもいいじゃん。ゆっくり返せばさ」と佐藤が言えば、 「だから、それがさ~。条件つけられてさ~。支払い終わるまで自由にはさせないって言われてんの!」 真島は机を叩く。 「なんだよそれ。なんで佐藤くんに怒るんだよ。おカド違いとはこの事だ!」 佐藤が机を叩き返す。 「はあ~つーか、しんどい~眠い~ゲームして~」と大あくびすると真島はまた机につっぷした。 「よっ、借金王(シャッキング)! ショッキング!」佐藤がはやし立てれば 「佐藤、さすがにそのダジャレ、キツい。オヤジギャグ」中田がツッコむ。 「なんだよ中田きゅん。ダブルツッコミじゃないと落ちないよ」 静観していた灰谷は口を開いた。 「オレ、代わってやろうか、シフト」 「え? マジ?」真島はくるりと首だけ回して灰谷を見た。 「オマエ、ここんとこ働きすぎだろ。いいよ。オレ出るよ」 「灰谷きゅん、カッコいい~」 「よっスパダリ!」 真島はガバリと起き上がり、「助かるわ~。頼む、灰谷。今日だけ。今日だけ頼む」と手を合わせた。 「いや別にいいけど。つうか佐藤の言う通り、そんなにムリして返さなくていいだろ」 「ダメだ。借金は借金。親しき仲にも礼儀あり。つうかオレは自分の好きにバイク乗りてえの!」 まあな、あの条件じゃあ無理もないか、と灰谷も思う。 「んじゃ、灰谷が行きますって連絡返しとくわ」 「おう」 「いやった~ゲームゲームゲーム三昧っ」 真島は小躍りしながらスマホに向かった。

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