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それから、数年。 僕と圭くんの日々に、穏やかさが戻ってきた。 僕は僕のままで、圭くんは圭くんのままで、温かい幸せを、二人で作っている。 でも、決して僕達は、真さんを忘れたわけじゃない。 真さんと圭くんの写真は今もリビングに飾ってあるし、命日には、毎年二人でお墓参りに行っている。 圭くんがこの先独り身で生きていくことを心配していた真さんのお母さんには、圭くんが、「真さんと、もう一人大切な人が出来ました」と報告したらしい。 勿論、圭くんが真さんの家に行ってお参りをすることも、毎年欠かしていない。 「マコ、お花、置いてあげて」 「うん!」 今日は、真さんの命日。 圭くんと二人、お墓参りに来た。 「もう少しだけ待っててね。絶対、約束は守るから」 真さんに話したい幸せが、今も両手に溢れるくらいあるけど、これからもっと、袋に詰めても溢れるくらい集めて、圭くんと二人で、真さんに会いに行く。 その日まで、もう少し天国から見守っていてね。 指切りげんまんをするみたいに小指を立てて手を振ると、一瞬、強い風が吹いて、小指に、何かが触れたような気がした。 それは、あの時僕の手を包み込んでくれた真さんの手の温もりに、よく似ていた。 「…またね」 バイバイでも、サヨナラでもなく、『またね』。 だって僕達は、絶対に、また会えるんだから。 「圭くん!今日はハンバーグにしようよ」 「そうだね。じゃあ帰りに材料買って帰ろう」 「うん!」 圭くんと二人、手を繋いで帰る道。 今日は、沢山の幸せな日々の中の一日。 真さんに話す幸せなお話の、一ページ。 ―END―

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