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夜遊びなんて、ドキドキするね

 食後の運動がてら、僕たちはバッティングセンターやってきた。何故だか、みんなが本気モードに入っている。 「よーし。勝負な。ワンゲーム15球。最速でホームラン出した奴の勝ちな。誰も入らなかったら、結人を1番喜ばせた奴の勝ち」  啓吾は何でも勝負やゲームにしたがる。今回もそのノリで、僕は審判を仰せつかった。球速150キロ。腕がもげそうだ。 「ね、ねぇ。球速過ぎない? 見えないんだけど。バットに当たったら腕もげない?」 「心配すんな。余裕だ。誰か、機械の使い方だけ教えてくれ」 「いやいや。余裕ぶっこいてるけど、朔は初めてでしょ? 1回試し打ちしてきなよ。機械の使い方教えるついでにさ」 「俺だけ練習していいのか? 余裕だな」 「余裕余裕。俺が最速ホームランで優勝するから。結人、景品楽しみにしてろよ」  啓吾が無駄に大きな声でカッコつけるから、周囲の視線がこちらに向く。そして、珍しく八千代が対抗する。 「ふざけんな。俺が勝つからな。結人、景品決めとけよ」 「景品は欲しいけどね。あのさ、もうちょっと落ち着いて? 皆、ホントに目立つんだから」  イケメン4人、雄剥き出しの本気モードな顔で、頭ド派手なのが2人も居て、目立たない方がどうかしている。こうなると当然、イケメン目当てのギャラリーができてしまう。僕が妬くのを完全に忘れているようだ。  最初の挑戦者はりっくん。何度もホームランゲートの真横スレスレには飛ばせたのだが、惜しくも入らなかった。けど、悔しがる顔もかっこいい。 「りっくん、ドンマイ! 残念だったけど、あんな速い球打てるの凄いね。腕痛くないの?」 「大丈夫だよ。腕もげてもいいからホームラン入れたかった····。ゆいぴに景品とってあげたかったのに····」 「けどりっくん、すっごくカッコ良かったよ。いっぱい写真も撮れたしね」  僕が素直に褒めた所為か、りっくんが照れて大人しくなってしまった。珍しい事もあるものだ。  続いて朔。さっきの練習でコツを掴んだらしく、最後の球がホームランゲートをくぐった。小さなガッツポーズが朔らしくて可愛かった。ビギナーズラックだと謙遜していたが、そんなに易々と入るものでもないだろう。 「朔! すごいすごい!! ホームランだよ!? おめでとう!」 「おぉ。自分でもびっくりした。で、景品はどれがいいんだ?」 「これ。このおっきいペンギンのぬいぐるみ! 可愛いなぁって思ってたんだぁ」  僕は、1メートルくらいある大きなぬいぐるみを貰った。 「お前のその笑顔が見れただけで、頑張った甲斐があったな」 「う、あ、えっと、またそういう事をさらっと····」  僕はもらったぬいぐるみを抱き締めて、熱くなった顔を隠した。朔の笑顔は凶悪だ。ギャラリーからも黄色い声があがっていた。  啓吾は、自信満々だっただけあって、初球からホームランゲートを掠めた。が、段々と調子を崩し、ラスト1球がゲートの枠に当たり跳ね返った。啓吾の絶望感に満ちた顔を見て、皆は笑うのを我慢できなかった。 「あっはは! あんだけ大見得切ってたのに····。啓吾やらかしたね〜」 「もう、りっくん。意地悪言わないの! 啓吾、惜しかったね。あんまり気を落とさないでね。啓吾のかっこいい写真いっぱい撮れたからさ、僕は満足だよ?」 「結人は優しいなぁ····。俺、ジュース買ってくる。皆は?」  落ち込んだ啓吾は、りっくんとジュースを買いに行った。その後ろ姿を見送っていると、啓吾がりっくんに背中をバシバシ叩かれていた。あれは、励まされているのだろうか。 「おい、俺の番だぞ。彼氏の雄姿、ちゃんと見とけよ」  啓吾とりっくんを見ていた僕の頭を、クルッと自分の方に向けた八千代。堂々と彼氏だなんて、頭から湯気が出るほど恥ずかしい。  異様なほど、肩に乗せた金属バットが似合う。そう、最後は八千代。桜華さんとよく来ていたらしいから、やっぱり上手いのかな。なんて思っていたら、5球目でホームランを決めていた。宣言通り、八千代の優勝だ。 「す、すごいね。八千代、野球やってたの?」   「やってねぇよ。ルールもあんま知らねぇ。けど、桜華とよくこの勝負してたからな。ま、余裕だったわ。ほら、景品選べよ」 「じゃぁねぇ······これ!」  僕は、自分の背丈と変わらない大きさの、猫のぬいぐるみを貰った。 「お前、それ持てんのか?」  朔が失礼な心配をしてくれる。 「持てるよ! おんぶする」 「結人、尻尾引きずってるよ。俺が持とっか?」 「汚すのは忍びないからぁ、お願いしますぅ」  せっかく貰った物を汚したくはなかったので、無駄な意地は張らず啓吾に持ってもらった。けど、少しだけ口が尖ってしまう。  さて、勝負も決着がついたことだし、僕も運動の時間だ。 「ねぇ、僕も打ってきていい?」 「そりゃ勿論いいけど····。ゆいぴ、何キロの打つの?」 「何キロくらいがいいかな」 「90····いや80くらいかな。ゆいぴ、打ったことあったっけ?」 「小学生の時に、1回だけ学校で」  皆が心配そうな目で僕を見る。   「え、なに?」 「あっちに75キロってのがあるぞ」  朔が指さしたのは、子供用の低速のボックスだった。 「僕だって速いの打てるもん!」  僕は、皆の忠告を無視して、100キロに挑戦することにした。ボックスの外では、皆がおどおどしながら見ている。僕だって、正直強がり過ぎたと思っている。だが、ここまで来たからには、もう後に退けない。  啓吾に機械の使い方を教えてもらい、いざスタート。果たして、球が見えるだろうか。一抹どころではない不安を抱えながらも、僕は覚悟を決めてバットを振った。 「ふぅんっ!!」  まさかの初球ヒット。だけど、肩が外れたかと思った。球が重くて、振り切ることすらできなかった。自分の非力さに嫌気がさす。初球以外、掠っただけで前に飛ぶことはなかった。 「当たんなかった····。けど、楽しかった」 「やっぱり、80くらいがちょうど良いんじゃね? 今だったら、速いの打った後だから球ゆっくりに見えるよ」  助言に従い、球速80キロに挑戦する。啓吾の言った通り、さっきより球が見えた。当たっても、さっきほど球は重くない。バットを振り切ることができ、ようやく球が前に飛んだ。なるほど、これがストレス発散になるわけがわかった。当たると気持ちいいんだ。  一体勝負は何処へやら、僕がぬいぐるみにはしゃいでいた所為で、完全に忘れているようだ。まぁ、賞品が僕だとかって話も出ていなかったし、ただの遊びだったのだろう。  予定よりも激しめの運動をして、僕たちは帰路についた。帰りの電車では、大きなぬいぐるみを抱えたイケメン達が目立って仕方なかった。  彼氏たちがカッコイイと言われるのは、純粋に嬉しいし鼻も高い。例え言い寄られても、皆が靡かないのもわかっている。けど、『僕のだよ』って言えないから、ずっと不安がつきまとう。周囲から見れば、僕たちは仲の良すぎるだたの()()なのだ。  八千代の家に着くと、荷物を置いて皆は一休み。僕は、家を出る前に洗濯していた物を干しながら、こうしていると家族みたいだななんて思ってニヤけてしまった。 「ゆいぴ、ご機嫌だねぇ。なんであんな嬉しそうに洗濯物干してんの?」  ベランダから、部屋の中で寛いでいる彼氏たちを見る。りっくんが手を振ってくれた。僕は、ふやけた顔で手を振り返す。1歩引いて見ると、異次元の様な輝かしさを放っている。あの華やかな輪に、自分も居ていいのだと思うと自然と心が躍る。 「めっちゃ笑顔で手振ってくれんね。結人さ、帰ってからご機嫌でずっと鼻歌歌ってたじゃん。可愛いなぁ。寒くねぇのかな?」 「可愛すぎるねぇ。啓吾、お風呂やってきてよ。俺、ゆいぴに上着渡してくるから」 「おっけ~」 「んじゃ、俺ちょっとコンビニ行ってくる。朝飯になるようなもん買ってくるな。他に何か要る物あるか?」 「俺、チュー······炭酸系」 「場野、不良だ~。タバコに続いて酒なんか飲んでたら、絶対結人に小言言われんぞ」 「小言じゃ済まねぇだろうな。つーか、お前ら飲まねぇの?」 「飲まねぇよ。勝手にしたらいいけど、ゆいぴにバレないようにしろよ」 「俺も~。結人の前では飲まねぇよ。絶対怒るじゃん。朔、ココア無くなったから頼むわ。明日の朝結人に入れてやりてぇって、場野が朝言ってた」 「お、ココア無くなったん忘れてたわ。ナイス大畠」 「場野さん、あざーっす」 「····わかった。他は?」 「俺は特に無いかな。ゆいぴにも聞かなきゃ。あ、奥さん、洗濯物ありがと。朔がコンビニ行くから、何か欲しい物あるかって」 「奥さんて何!? 恥ずかしいからやめてよぉ····。えっとね、チョコ系のデザート食べたい」 「任せろ。美味いの探してきてやる」 「ちょっ、コンビニにあるのでいいよ?」 「そうか。それじゃ行ってくる」 「気をつけてね。朔、行ってらっしゃい」 「ん゙っ·····。い、行ってきます」 「朔ってあんな赤面するんだな。純情かよ」 「啓吾、ゆいぴに行ってらっしゃいって言われてみ? 感極まるでしょ」 「······あー、極まるな。さて、風呂沸かしてくるわ」 「頼むわ。結人、眠くねぇか?」 「今日は大丈夫だよ。昨日は寝ちゃってごめんね」 「いいよ。お前が来て浮かれてた。俺の方こそ、無理させて悪かったな」 「無理なんかしてないよ。八千代の誕生日、お祝いしたいって我儘言ったの僕だし」 「来年は、俺らの誕生日も祝って欲しいな~」  りっくんが、僕を後ろから抱き締めてお強請りする。 「もちろんだよ! 今年はゴタゴタしてたから、ちゃんとできなかったもんね。お家に突撃は八千代にしかできないけど。僕ね、皆の誕生日もちゃんとお祝いしたい」   「やった~。毎年プレゼントくれてたけど、ただの交換みたいな感じだったもんね」 「あはは。誕生日近いし、ただの幼馴染だったからね。来年からは、恋人としてお祝いするからね」 「ん゙〜っ、恋人····。楽しみだなぁ」 「俺も、楽しみにしてるからなっ」  啓吾がタオルの片側を踏んで、反対側を手で持っている。そのまま、お風呂から擦り足で来たようだ。 「ねぇ。啓吾、何してんの? 僕、バカだからわかんないよ····」 「え? セグ●ェイ」 「お前、ちょいちょいそういう事するよな。なんかアレだな。幸せそうだな。けど、タオルでやんな。傷むだろ、アホ」 「あ、バカにしてんだろ!? 人生楽しまなきゃだろ! けど、タオルはごめん!」 「啓吾は、常に人生を謳歌してるよね。僕まで楽しくなっちゃうよ」 「へへっ。楽しいに越したことはねぇだろ。あれ? 朔まだ帰ってねぇの?」 「そういえば遅いね。大丈夫かな」 「あんな派手な頭の大男襲う奴いねぇだろ。どんなチャレンジャーだよ。放っときゃそのうち帰ってくんだろ」 「でもぉ····」  噂をすればなんとやら、数分したら朔が帰ってきた。僕は玄関に迎えに走る。 「朔、おかえり! 遅かったけど大丈夫?」 「ん゙っ····。ただいま」  さっきと同じ反応だ。可愛いなぁ。それにしても、凄い荷物の量だ。大きな袋にパンパンに詰めている。 「凄い大荷物だね。何買ってきたの?」 「明日の朝飯と、ジュースとチューハイとココアとつまむもん」 「こんなに沢山、ありがと。重かったでしょ····って、んん?? チューハイ?」 「場野がチューハイって····。あれ、要らないんだったか?」  僕は、部屋に戻り八千代を𠮟する。 「八千代、お酒飲むの? 未成年なのにダメでしょ!?」 「え、朔マジで買ってきたの? ····って、何その大荷物」  啓吾が大きな買い物袋を見て驚いた。 「どれがいいか迷ってんのが面倒くさくなったから、要りそうなもんテキトーに買ってきた」 「朔は大雑把だなぁ。お、俺ぶどうにしよ」 「啓吾? お酒ダメって言ったでしょ。未成年だよ!」 「結人は堅いな~。酒くらい皆飲んでるだろ?」 「飲まないもん。お酒は20歳になってからだよ」 「啓吾。ゆいぴだよ? 飲むわけないでしょ」 「そっか。そうだよなぁ····。じゃ、酒はお預けね」 「わりぃ。俺が買ってきたから····」  確かに買ってきた朔も悪いのだが、見るからにしょぼんとされると心が痛くなる。 「朔、よく買えたよね。お店で年齢確認されなかったの?」   「その見てくれで年齢確認もくそもねぇだろ。俺もされたことねぇし」 「八千代、よく飲んでるの?」 「······飲んでねぇ」 「僕、嘘つき嫌い」   「たまにな」 「もうダメだよ。煙草もそうだけど、身体に悪いんだよ····」 「なに、心配してんの?」 「当たり前でしょ! 長生きしてほしいんだよ····」 「はぁ····。場野ぉ、さっさと結人風呂入れてこいよ。んな発情した顔してないでさぁ」  啓吾は言葉を選ぶという事を知らないのだろうか。八千代は啓吾の頭をはたき、僕を抱えてお風呂へ向かった。  丁寧かつ甘い洗浄を終え部屋に戻ると、お酒の臭いがした。啓吾だ。  八千代は、僕をそっとベッドに寝かせてくれた。僕は、啓吾をじっと見て聞いた。 「啓吾····飲んだの? ダメって言ったのにぃ····」 「ん? 飲んでねぇよ? あー、落ちてた缶踏んでブシャったからかな。場野、ごめんな。カーペット濡らした。わりぃけど、俺も風呂入ってくるわ。服濡れて気持ちわりぃの」  八千代の返事も聞かずに、啓吾はお風呂へと向かった。   「はぁ····そんでそこ濡れてんのか。カーペットは洗えばいいけどよ。ったく、どんな勢いで踏んだんだよ」 「ジュースで缶タワーとか言って、詰んだやつ持って立ち上がったらバランス崩して、すっ転んだらそこにチューハイの缶があったんだ。大畠は本当にアレだな。アホだな」   「あぁ、アイツはアホだな。さっきも──」  八千代がさっきのセ●ウェイの話をしたら、朔が笑い崩れた。朔は、しょうもないボケが好きなようだ。 「それよりゆいぴ、どうしたの? 自分でお尻弄り始めてるけど····」 「ずっと寸止めしてたらああなった。自分じゃイけねぇから、早く挿れろってキレて泣き出したんだよ。面白ぇだろ」 「イかせてあげなよ。ホント意地悪いな。ゆいぴ、泣きながら弄ってんじゃん。俺がヤるよ?」 「焦らしてからイかせた方が、アイツすげぇイキ方すんだろ。まぁ、見てろよ」 「ふぇ····イけないよぉ······りっくぅん、イかせてぇ」 「ダメだ。自分のイイとこ探せつっただろ。あったんか」 「と、届かないんだもん····」 「そういう時に、コレ使うんだよ」  そう言って、八千代が取り出したのはバイブだった。それを渡され、自分で挿れろと言われた。 「自分で挿れるの?」 「当たり前だろ。ほら、しっかり濡らして挿れろ」 「ひぅっ····んっ······んあっ」  ちゅぽんと先っちょを飲み込んでしまった。少し奥まで挿れると、指では届かなかった所に当てられる。 「出し挿れしてみろ」  八千代に言われるがまま、一生懸命自分で出し挿れする。イイ所への当て方がわかってきて、コリコリを擦ってイキそうになる。けど、やっぱりイケない。 「八千代ぉ····やっぱり、イケないよぉ······僕、皆にシてもらわないとイケないのぉ」 「しゃーねぇな。んじゃ、思う存分イかせてやるよ。ちゃんと、最後まで息してろよ」 「んっ、ひゃい····」  バイブを引き抜くと、八千代は凶悪にいきり勃ったモノを挿れてくれた。よく解せていたからなのか、奥まで一息に貫かれた。 「い゙あ゙ぁぁぁ····ん゙ぇ゙っ、ゔえ゙ぇ゙ぇぇ」 「あー······あれ、すげぇ入ったんじゃないか? 結人キツそうだな」 「でもゆいぴ、あれでイッてるよ。うわぁ····めっちゃイッてんじゃん。手足ガクガクさせてんのヤバい。すっげぇ興奮するんだよね」 「すげぇわかる。噴くの止まんねぇみたいだな。結人、噴きまくってパニクってる時、すげぇ可愛いよな」 「うん、ホント可愛いよね。もっとワケわかんなくさせたくなる」  訳の分からないことを言って和んでいるが、こっちはそれどころじゃない。どれだけ吐いても、どれだけ噴いても、どれだけ手足がガクガクしていても、八千代が腰を止めてくれない。  こんな状況なのに、啓吾と交代で朔はお風呂に入りに行った。自由だなぁ····。なんて、視界の端で見て、頭の隅っこで思った。

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