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後悔するんだからさ
いかがわしい話は伏せ、これまでの僕たちについて改めて説明する。
途中から涙目で聞いていた真尋。聞き終えると、黙って僕のスマホに手を伸ばした。
「ちょっ、何するの?」
「····アイツらに結にぃを解放しろって直談判する」
思考回路がバグっているようだ。ぶっちゃけ、りっくんよりも面倒臭い。
「ねぇ、ホントに諦めてよ····。なんでここまで聞いてまだいけると思うの? 僕ね、もうみんなじゃなきゃダメなんだよ····」
「聞きたくない····」
か細く小さな声で何かを呟く真尋。スマホをたぷたぷしながら肩を震わせている。
「え、なに? 真尋····?」
「もう聞きたくない! 結にぃは俺のだって言ってんじゃん!」
「えぇー····。なんでそんな急に駄々っ子みたいになってるの? 僕、真尋のじゃないし」
どうやら、情緒もバグっているようだ。もう手に負えない。
お手上げだと思った瞬間、僕のスマホからコール音が聞こえた。画面を見ると、啓吾に電話をかけているではないか。
「ちょっと!? ホントに電話するの!? て言うかなんで啓吾なの?」
「あのチャラ男なら色々勝てそうな気がする」
失礼すぎる。真尋が啓吾に勝っている所なんて、血の繋がりくらいなのに。
スマホを取り上げようと奮闘するが、手の長さが違いすぎて届かない。そうこうしているうちに、啓吾が電話に出てしまった。
『はいはーい。結人? どした?』
微かに聞こえる、気の抜けるような啓吾の明るい声。その優しい声に安心する。けれど、癒されている場合ではない。
「真尋、切って!」
まずいまずいまずい! 啓吾が余計 な事を言う前に切らなくては。僕は小声で真尋に指示する。
しかし、真尋がタップしたのは、通話終了ボタンではなくスピーカーのボタンだった。
『ん? 結人〜? 寂しくなった? つぅかなんでビデオ通話じゃねぇの? ····え? あぁ、また寝ぼけてんのかもな』
どうやら八千代が乱入してきたようだ。遠くに八千代の声が聞こえる。て言うか“また”って?
「真尋! もう切って!!」
声を抑えて叫ぶ。奪い返そうと試みてもいる。が、高く掲げられたスマホに手が届かない。
『貸せよ。····結人、寝てんのか? ····なぁ、今日もイかせてやろっか』
八千代だ。寝ている僕をイかせる? 何を言っているのだろうか。
『お前いい加減にしとけよな。起きたらどうすんだよ。結人拗ねちゃうだろ』
『突っ込んでも起きねぇのに、こんなんで起きるわけねぇだろ。つぅか、寝ながら声漏らすん可愛いだろうが』
まさか、真尋に聞かれてるなんて思っていないだろう。そんな2人だから、これ以上何を言い出すか本当に分からない。
それに、八千代がこれから何をするのか、僕ですら予想がつかない。どうやら、啓吾よりも八千代のほうがヤバそうだ。
『そりゃ可愛いけどさ。あ、スピーカーにしろよな!』
『わーってるよ』
僕と真尋は思わず固まり、電話の向こうの動向に注目する。
『····鳴らすぞ。イけよ──(パチンッ)』
「ひゃぅっ····」
え? 何が起きたのだろう。
おそらく指パッチンだと思うが、その音を聞いたらお腹の奥がズクンとした。甘イキしてしまったのだ。
「んぇ? ····あっ! 脳イキだっ!!」
僕は思わず声を上げてしまった。
まさか、寝ている僕に電話越しでこんな事をしているなんて。それも常習犯のようだ。驚きを通り越して呆れてしまう。
『結人? 起きてんのか? なんか声遠くねぇか?』
「お前ら····結にぃにナニしてくれてんだよ」
『あ? お前真尋か? なんでテメェが居んだよ。結人は?』
やってくれた。絶対に面倒くさい事になるじゃないか。真尋のバカ····。
「····結にぃなら俺の隣で軽イキしてるよ」
『『あ゙ぁ!?』』
「俺の結にぃに何仕込んでくれてんの? マジでふざけんなよ」
『お前のじゃねぇだろ。俺らンだ。つぅかお前、結人のイキ顔見てんじゃねぇぞ』
「すげぇ可愛いね。でもこれ軽イキじゃん? 今から俺のでちゃんとイかせてあげる。アンタらも聞いとけば? どうせ今からじゃ来れないだろうし、来たって間に合わないよ」
『マジで莉久みてぇ····じゃねぇや。あのさ、場野もう飛び出してそっち向かったよ? バイクで』
「「······え?」」
行動が早すぎる。もうすぐ日付も変わる、こんな時間にバイクで訪問だなんて。それに、なんて言って家に入るつもりなのだろう。
ダメだ。考えがまとまらない。
『結人? 真尋になんかされてんの?』
「さ、されてないよ····」
『ホントに?』
「してないよ! 結にぃが嫌がってんのに無理矢理デキるかよ!」
『あっはは。だってさ、場野。だから落ち着けよ』
どうやらハッタリだったらしい。一安心だが、次の八千代の台詞で僕達は震え上がった。
『ッフゥー····お前ら明日俺ん家来い。朝イチな。真尋ぉ、今晩結人に手ぇ出したらマジでぶっ殺すかんな』
「ねぇ結にぃ、コイツ不良なの? すげぇ怖いんだけど」
「それも聞いてなかったの? 元 不良ね。あと八千代の実家、ヤクザ屋さんだよ」
真尋はそっと通話を終了した。そして、何事も無かったかのようにベッドに入る。
僕も眠いので、考えるのは明日にして寝ることにした。何故か、真尋が僕を抱き枕にしているが、手は出されていないからセーフかな。
(もういいや。眠い····)
翌朝、真尋と一緒に八千代の家へ向かう。いつの間に仲良くなったのかと、雄くんたちが驚いていた。
真尋が『夕べ電話でちょっとね』と誤魔化していたが、あながち嘘ではない。仲が良くなったというのは事実と相反するが。
八千代の家には、りっくんと朔が先に来ていた。予想はしていたが、敵対心剥き出しの両者。これから一体、何が始まるのだろうか。
「真尋。お前昨日、あれから結人に手ぇ出してねぇだろうな」
「出してないよ。結にぃすぐ寝ちゃったし」
皆なら、そこで間違いなく眠っている僕を犯したのだろう。皆は『所詮は中学生か』という目で真尋を見る。
「つぅかさ、なんで襲わないで俺に電話してきたの?」
「それは····」
僕は経緯を話した。ついでに、これまで寝ている僕にイタズラしていた事も叱責した。反省なんて、まるでしていないようだが。
そして、啓吾になら勝てそうと言った真尋に、啓吾がとんでもない提案を持ちかける。
「へぇ····。俺になら勝てそうなんだ。んじゃ、真尋ができない事してやろっかな」
そう言って、啓吾は僕の手を引いて立ち上がった。
「んぇ? 啓吾、何するの?」
「中坊には想像もつかないえっちな事して、どっちが上か見せてやんだよ」
「はぁ····? 真尋に見られるのヤだよ。それに、皆が許すわけないでしょ?」
溜め息混じりに啓吾を諭す。けれど、皆の様子がおかしい。朔でさえ、啓吾を止めようとしないのだ。
「朔? ダ、ダメだよね?」
「····いいんじゃないか?」
あまりに予想外な返事に、僕は言葉を失った。
皆の言い分はこうだ。真尋は従兄弟だから、僕たちが結婚した後も付き合いがあるだろう。そうなれば、また僕が狙われるかもしれない。それならば、今のうちに僕が誰のものかを思い知らせておこうという事らしい。
要は、完膚 なきまでにヘコませて強制的に諦めさせるのだとか。そうして、僕が誰を選ぶのかを見せつけるのだそうだ。
話し合いで解決を目指す事はできないのだろうか。いや、そんな発想が出るような甘い人達じゃなかったね。
「お前、童貞か?」
朔がしれっと聞く。
「違うけど」
真尋もしれっと答える。慣れているとは思ったけど、やはり卒業組か。なんだかすっごく悔しい。
そして、りっくんの尋問のような質問責めが始まった。
「相手は男? 女?」
「女」
「まさかと思うけど、血の繋がりがあるからいけるとか思ってないよね?」
「強みにはなると思ってるよ。小さい頃からずっと仲良かったし」
「それは俺のほうが有利だね。一緒に居た時間ナメないでよ? で、真尋はノンケなの?」
「結にぃ以外の人間に興味持ったことない。アンタらは?」
「俺らの事はいいんだよ。······まぁ、全員ノンケだよ。男の経験はゆいぴだけ。つぅかホント、俺と一緒だね」
りっくんはふわっと微笑んだ。一瞬空気が和らぎ、平和な解決への光が見えたように感じた。
「何が?」
「俺もゆいぴ以外を好きになった事ないんだよ」
「んじゃ、俺の気持ちわかんじゃねぇの?」
「すっごいわかる。けど、だったら俺の気持ちもわかるでしょ?」
「··········わかる」
尋問の最中だが、僕は洗浄に連れ出される。部屋を出る時、りっくんの勝ち誇った顔が見えた気がしたが、気のせいだと思っておこう。
それにしたって、おばあちゃんの葬儀の翌日なのだ。もう少し、僕の気持ちを慮ってくれてもいいと思うのだけれど。
現状をよく理解して、僕のぐるぐるモヤモヤした心のほうをどうにかしてほしい。が、そんなのは脱衣場へ入るなり、どうでもよくなってしまった。
啓吾は、しこたまキスをして僕を裸にひん剥くと、洗濯機の上に座らせる。
「んなぁっ!!?」
ヒヤッとして変な声が出てしまった。
「冷たい? タオルとか敷いたら滑って危ないから、ごめんな。結人、足開いて」
僕はおずおずと、自ら足を開く。啓吾は指にコンドームを嵌めると、緩み具合を確認するように指を1本挿れた。
少し解すと、ナカを掻き回しながら僕のおちんちんをしゃぶる。しっかり勃っている僕のおちんちんが、パクッと全部口に入ってしまう。その物悲しさったらないが、口内の温もりと快感がそれを凌駕する。
「んぁ····啓吾? 洗··浄は?」
僕は、啓吾の頭を押し戻して聞いた。
「さっさとふわふわさせてやろっかなって。昨日の今日だし、シラフでいんのしんどいかなぁって思ってさ。とりま先に、昨日使われてないかのチェックな」
そう言うと、再びおちんちんに食らいつく。
なんだかんだいつだって、僕の気持ちを蔑ろにしているつもりはないんだよね。
「やぁっ····使 われてないよぉ」
「それを今確かめてんだろ 」
「ひゃぁっ、喋んないでぇ! んぅっ····そ、んなに、吸っちゃらめぇ····あぁっ、出ちゃう··啓吾離してぇ!」
どれだけ力いっぱい頭を押しても、啓吾は腰を抱き締めたまま離してくれなかった。
未だにしゃぶられるのは慣れない。そのうえ、口に出してしまうなんて本当に申し訳ない。それに、恥ずかしくて顔を見られなくなるのが寂しい。
「ん。使われてないみたいだな。よし、んじゃ綺麗にしにいくよ」
「い、今からぁ?」
洗濯機から降ろされ、僕はヨロヨロと啓吾に寄りかかる。
「あっはは。もうヘロヘロ? ほーら、可愛がんのこっからだぜ? 頑張れよ〜」
啓吾は僕の腰を抱き、意気揚々と浴室へ連れ込んだ。これから····。怖いな。
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