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お泊まりと言えば····
あーだこーだと賛否は別れたが、結局皆が折れてお泊まりが決定した。
母さんに連絡すると、真尋が一緒なことに驚いていた。そりゃそうだよね。真尋はつむちゃんに連絡すると、僕たちの邪魔をするなと怒られたらしい。
けれど、鋼のメンタルを持ち合わせている真尋は、僕たちが是非とも泊まれと言った風に伝えたんだそうだ。面の皮が厚いにも程がある。
そして、お泊まりと言えばする事はひとつ。えっちだ。
電話を切ると、潤ませた瞳で僕を見つめ、またもや軽口を叩く真尋。
「結にぃと朝まで····んはっ♡ 覚悟してね」
軽々しいウインクに、いちいちキュンとする僕もいけないんだ。けれど、イケメンのウインクに対抗する手段など持ち合わせていない。
「んぇぇ····」
僕が困惑していると、空気をぶち壊すように悲鳴が響いた。僕のお腹だ。
「ふはっ··すげぇ音。まずは飯だな。ぉし、肉食うか。朝までヤんだったら体力つけねぇとな」
「うん! ····あ、吐かないようにしてくれる?」
「······まぁ、そりゃそんとき考えるわ」
絶対吐かせる気だ。けれど、食欲に負けた僕は、たらふくお肉を胃に収めてしまうのだった。
八千代がどんどん焼いてくれるお肉を、僕はバカスカ頬張る。真尋に『リスみたいで可愛い』と言われたが、バカにされているのだろうか。
そして、絶え間なく運ばれてくるお肉の量に驚き、流石に支払いの心配をしだした真尋。一応払う気でいた事に、僕たちは感心してしまった。
「あー··金要らねぇぞ。ここ、俺の母親の店だから好きなだけ食え」
八千代が真尋に寛大だ。烏龍茶なのに、お酒を飲んでる様に見える。片方立てた膝にグラスを持つ腕を置いて、余裕のある感じが大人っぽくてカッコイイな。
僕も、皆みたいに大人っぽく振る舞えたら、もっとスマートに真尋を引かせる事ができたのかな。僕は、皆に憧憬を感じずにはいられなかった。
「え、ここ場野の親の店なの? すげぇ」
驚いた真尋は、素直に感嘆する。けど、問題はそこじゃない。
「おい、場野さ ん な」
八千代が、グラスを持つ手の人差し指を真尋に向けて言う。
「無理」
「無理ってお前なぁ··。俺らのこと何て呼ぶ気だよ。1回全員呼んでみ」
お肉とご飯を口に詰め込み、啓吾がもごもごしながら言う。こういうお行儀の悪い所は、何度注意しても直らないんだから。可愛いから強く言えない僕も悪いんだけどね。
そして、真尋は啓吾に応えて、僕の彼氏たちに失礼をぶっ放つ。
「場野、朔、変態、啓吾」
いくら何でもだ。これは酷い。皆、当然の事ながら眉をひそめた。すかさず、最も酷い呼ばれ方をしたりっくんがキレかかる。
「なんで俺だけ名前ですらないんだよ!?」
「変態は変態で充分じゃん」
朔がご飯のお椀とお箸をそっと置き、瞬きひとつ置いて真尋に視線をやる。
「失礼千万だな。お前、一応年下だって分かってるか?」
けれど、真尋は臆することなく減らず口を叩き続ける。
「俺が正式に結にぃの恋人になったら対等だろ? だったら今から慣れといたほうがいいじゃん」
「格上げされる気満々かよ。それにしちゃお前さ、俺らに態度悪すぎんじゃねぇ? 流石に我慢も限界よ?」
啓吾はおどけた調子で言うが、目は苛つきを隠せていない。
「だって、まだアンタらの事完全に認めたわけじゃないからね。すげぇと思うトコはあるけど、俺だって負けないし。だいたい、結にぃを横取りされたって覚えてる? それに、俺反抗期らしいし?」
僕が反抗期扱いした事を根に持っているようだ。事実なのだから、逆ギレされても困るんだけどな。
「もう··執拗 いなぁ。····ハァ··なんにしても失礼でしょ。せめて君付けとかさ、もうちょっと敬意のある呼び方にしなさい」
「わ、わかったよぅ」
僕が凛として注意してみせれば、昔ほど忠実ではないにしろ言う事を聞く。惚れた弱みというのだろうか。やはり、真尋も僕には弱いのだ。
「おぉ〜、結人が兄ちゃんっぽい」
「で、なんて呼んでほしいの?」
また随分上からな物言いだなぁ。なんてのは、皆とっくに諦めているようだ。
「啓吾さん」
「莉久さん」
「瀬古さん」
「場野さん。名前で呼んだら殺す」
「箸向けんのやめろよな。あー··そういや、場野だけだよね。結にぃにしか名前で呼ばせてないの。なんで?」
まったくこの子は、早速呼び捨てなんだもん。箸を握る八千代を見て、思わず溜め息が漏れる。
「真尋、聞いたんだったらちゃんと言われた通り呼んでね。あと、理由はねぇ──」
大雑把にだが、僕だけが“八千代”と呼ぶ事を許されている理由を話す。
「──だからね、多分冗談でも呼んだら殺されちゃうよ」
「マジでな。俺、フザケて呼んだら殺されかけたから」
「うーわー。暴君かよ」
あぁ、どうして真尋は皆に喧嘩を売るような態度ばかりとるのだろう。僕が落ち着かない要因はこれだ。
けれど、そんな僕を思ってか、皆は前ほど真尋に突っかからなくなった。単純に、反抗期の態度の悪さに慣れただけなのかもしれないけれど。
「ねぇ真尋、今度僕の彼氏にそういうこと言ったら、その瞬間恋人体験終わりにするからね」
「んぇ!? わ、わかった。もう言わないから····結にぃ怒らないで?」
「それは真尋次第だよ。僕の居ない所でもダメだからね」
「ぅ····わかった」
僕が居ない所では言うつもりだったのだろう。けれど、これで幾分か態度がマシになるだろう。なにせ、僕の言いつけは絶対みたいだから。
きっと、真尋が1番恐れているのは、僕に嫌われる事なのだ。
僕の毅然とした態度に、皆は見直したと言っていた。最近の僕は、優柔不断に拍車が掛かっていたから、少しでも挽回できたのなら良かった。
今日も、お腹いっぱい食べて八千代の家に戻る。毎度の事ながら、吐かされるのを忘れて食べすぎてしまう。僕の学習能力は、もうずっと迷子らしい。
それにしたって、八千代が僕のお皿に、止め処 なくお肉を乗せていくんだもの。その上、啓吾が自分のご飯と一緒に、頼んでもないのに僕の分まで注文するから。挙句の果てに、朔がデザートを注文してくれる。
それを、りっくんが甘いトークで気を逸らせながらパクパク食べさせるんだ。いつも、気がついたらお腹いっぱいで、お店を出る前から眠くなっている。
「結にぃ、眠い?」
「んぅ····大丈夫だよ。寝な··い····」
瞼が重くて仕方ない。そんな僕を、壊れ物を置くようにそぅっとベッドへ寝かせて、りっくんが真尋に言う。
「30分くらい寝かせてあげよ。それくらいで起こさないと、もう起きなくなるから」
起こす気なんだ····。なんて思うと同時に眠りに落ちていた。
おちんちんに温もりを感じて目覚める。ふと見下げると、真尋が僕のを咥えていた。
舌使いが上手く、イイ所に絡められる度イキそうになる。けれど、イかせてはくれない。真尋は手にローターを持っていて、僕が起きた事に気づくと、それを亀頭にあてがった。そして、寝起きの身にはキツい最大出力で振動させる。
「ん゙あ゙ぁっ! まひっ··んぅぅ····そぇやめ゙でぇ」
「おはよ、結にぃ。これ、気持ちぃ?」
「イ゙あぁっ!! 気持ぢぃっ··から····らめ··イッちゃう····」
「いいよ。好きなの、ここだよね」
そう言って、真尋は裏筋に強く押し付ける。振動が響き、その衝撃で達してしまった。
どこが好きなのかなんて、正直分からないんだ。皆が触ってくれれば、余す所なく気持ち良いのだから。
僕は場所と言うよりも、誰にどうされるかというのが重要らしい。
「結にぃ、可愛いね」
真尋は僕を抱き上げ、膝に乗せて胸に愛撫をする。優しいのか焦らされているのか、身体は跳ねるが擽ったさも混じってしまう。
真尋は、僕に触れているだけで満足そうにする。眉をひそめ、おちんちんを熱くしていても、僕が首に手を回すと嬉しそうに微笑むんだ。可愛くて、ついつい甘くしてしまう。
頬に手を添え、キスはしないけど頬擦りをする。確かに、真尋を愛しいと思う。ほっぺになら、キスをしてしまいそうになる。
けれど、これは僕なりの線引き。皆以外に唇は捧げない。皆も真尋も、僕のそれを分かってくれているようだ。
僕は、まだ少しぽやっとしながら、素直な気持ちのままに真尋の耳元で囁いた。
「真尋、ごめんね」
「····え?」
僕と真尋の時は止まり、静かに見つめ合う。そして、僕は真尋に問う──。
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