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夜は始まったばかりだよ

 八千代に『跨れ』と言われ、おずおずと胸の辺りに跨る。僕は八千代のおちんちんをいただき、八千代が僕のお尻を解ぐすのを再開する。  俗に言うシックスナイン( 69 )、とんでもなく恥ずかしい体勢のやつだ。皆、本当にこれ好きだなぁ。名前からしてえっちだよ。  意味を教えてもらった時は、聞いてるだけで恥ずかしくて皆の顔を直視できなくなったっけ。  僕がしゃぶっていると、隣にりっくんが座った。 「ゆいぴ、俺の握れる?」 「ん··ひゃい」  僕は、りっくんのおちんちんに手を伸ばす。  一生懸命扱いていると、嫉妬した八千代が前立腺をコリコリ潰してきた。意識がお尻に向いてしまい、思うように奉仕できない。正直、もう結構ヘロヘロだ。  イカされ過ぎて、段々手に力が入らなくなってきた。このままじゃ、また僕ばかりが気持ち良くなってしまうじゃないか。  けれど、八千代に『待って』と言うと、食い気味で『待たねぇ』と言われベッドに降ろされてしまった。  しゃぶるの、あんまりヨくなかったのかな。なんて心配は無用だと気づく。だって、おちんちんはギンッギンなんだもの。  転がすように降ろされ、ガバッと脚を開かれた。そして、股ぐらに迫ってくる八千代に怯える。血管が浮き出るほど興奮して、フゥーッ··フゥーッ··と息を荒げてるんだもん。 「場野、結人が怖がってるぞ。ちょっと落ち着け」 「落ち着いてっけどな、コイツ見りゃ分かんだろ。とろっとろで犯してほしそうな(ツラ)してんのに我慢できっかよ」 「まぁ、しょーがないでしょ。場野、ゴリラだから」 「ははっ、そりゃンな顔で迫ったら怖がるわ」  りっくんと啓吾がまた揶揄う。そんな事を言ったら、八千代が荒れちゃうのに。それに、ゴリラって言うより── 「テメェら····」 「違うよぉ····。八千代(やちぉ)はねぇ、狼らよ」 「ははっ、狼だってぇ。俺ら全員じゃんね」 「それはヤバいってゆいぴ。こんなに可愛い赤ずきんちゃん、帰せるわけないじゃん」 「アホか。どこに帰すっつぅんだよ」 「····ハッ··んあぁぁぁ!!! そうだった! ヤッバい、マジでヤッバい! なんかやっと実感湧いてきた····」  りっくんが壊れ気味だ。する前からこんな変なテンションで大丈夫かな。 「うるせぇぞ莉久。お前も落ち着け。そんなんじゃ、最終日までメンタルの方が持たねぇぞ」 「ハァ····ホント、メンタルもだけど心臓がヤバい」 「んぇ? りっくん、心臓(しんじょぉ)····大丈夫(らいじょぉぶ)?」 「おー、止まったらライフセーバーの朔に心マしてもらえ。つぅかちょっと黙ってろ。結人がこっちに集中できねぇだろ」  いよいよ、トップバッターの八千代が入ってくる。いつもより、心做しか大きいし硬い気がする。押し拡げられる圧迫感が増し増しだ。 「んぁぁ··おっき····ふ、ぁ··硬ぁい····」 「お前もちょっと黙ってろ」  八千代は、手で僕の口を塞いだ。大きいだの硬いだのと言うと、いつもこうして口を塞がれる。照れているのだろうか。  えっちの最中は、特に口数の減る八千代。眉間に皺を寄せ、苦しそうな顔で僕のナカを掻き乱す。余裕がない時の顔だ。それほどに僕を求め、見て触れて呼んで僕を感じている。僕だって然り。  口を塞いだまま奥までどちゅっと捩じ込まれ、声を出せない苦しさに藻掻く。快感から逃れるようにシーツを握り締め、八千代が腰を引くとキツく結ばれた手も緩む。そして、また重い一突きでシーツを固く握る。  あまりの苦しさに、八千代の腕を咄嗟に掴んだ。涙をたっぷり溜め見つめると、八千代がえっちに笑う。その瞳は、“イジめてやるから覚悟しろ”と言わんばかりだ。  僕の泣き顔は、そんなにも嗜虐心を擽るのだろうか。皆、例外無く僕の泣き顔に興奮するらしい。なのに、引っ込みがつかないくらい泣かされ、それに比例して皆の激しさが増すからいつも困るんだ。 「奥解ぐしてやっから来い」 「あぇ····ひぁぃ····」  八千代は、抜けないようにそっと僕を抱き上げる。激しさの中で与えられる優しさに、胸がキュンと締め付けられる。 「あ? なんで今締まったんだよ」 「はぇ····八千代(やちぉ)(やしゃ)ひぃかゃ····」  八千代の首に手を回し、真っ直ぐ目を見つめて言うと、腰が折れそうなくらい思い切り抱き締められた。そのまま、下からどちゅっと突き上げられる。解ぐすんじゃなかたっけ····? 「んい゙っ····ぁ··かはっ····んぎゅぅぅ····イ゙ッ、ンふぅ゙····」  予想外の衝撃に、上手く声が出せない。突然貫かれた驚きと少しばかりの痛みで、パニクって八千代の頭を思い切り抱き締める。そして、そのまま深い絶頂を迎えた。  八千代は僕の腰を抱き締め、下から激しく突き上げる。奥をぐぽぐぽされる度、精液が溢れる。連続で数回イクと、途中から潮に変わった。  そうなると、僕が自力で座っていられなくなるまで、さらにイかせ続ける。グデグデになった僕を寝かせると、正常位で本格的に奥をイジめる八千代。僕を見下ろすえっちな顔を見ているだけで、お尻がキュンとして軽くイッてしまう。  あまりの激しい責めに、僕から(まろ)び出るものが嬌声なのか絶叫なのか分からない。どちらにせよ、自分の声が部屋に響くのは恥ずかしいから、自分で口を塞ぎ必死で声を抑える。  けれど抵抗虚しく、腰が痙攣するほどの重い一撃で奥を抉られ、とても甲高い声で喘いだ。今の、女の子みたいで嫌だな。 「すげぇ声出んな。雌らしくていいじゃねぇか」  僕の顎を指で持ち上げて言う八千代。なんてカッコイイんだ。ぼんやりと滲む視界に映る八千代を見つめる。  “雌らしくて”とは、どういう意味なのだろう。女の子みたいなのがいいのかな。 「余裕ねぇの(たま)んねぇよな。俺も後でそんな声出させてみてぇ」  なにやら、朔がワクワクしている。朔も····なのかな。 「朔··も、女の子みたいな、声····聞きたいの?」 「ん? 女みたいな声ってなんだ?」 「あー··お前なんか勘違いしてんだろ。女じゃなくて“雌”の声がイイんだ··よッ」  八千代は色っぽく前髪を掻き上げながら言うと、僕の腰を掴んでガチガチなそれを最奥へと叩き込んだ。 「んあ゙ぁ゙ぁ゙ぁっ!! イ゙ッ··ん゙ん゙っ····」  そのまま、腰を押し付け奥をグリグリ、グッグッと限界まで抉り込む。ダメなところに当たって声が出ない。潮がおしっこみたいに出続けている。蛇口を開け放った水道みたいだ。僕のおちんちん、遂に壊れちゃったのかな。 「ん、そういう声もイイけどな。さっきみてぇな急な刺激に反応するお前が可愛いんだよ」 「お、場野がちゃんと説明してる〜」 「茶化してんじゃねぇぞ、啓吾」  聞き慣れないその響きに、イキ狂っている僕でさえ固まってしまった。聞き間違いではないと思うのだが····。 「····ぅお? え、今“啓吾”って呼んだ?」  啓吾が、半信半疑で八千代に問う。 「文句あんのか」 「文句はないけどさ····。今更なんで?」  この場にいる全員が抱いた疑問だろう。ずっと苗字で呼んでいたのに、どういう風の吹き回しなのかな。 「なんとなく」  腰を止めず、話に集中してないような振る舞いの八千代。照れ隠しだろうか。僕には口を挟む余裕などないが。  それよりも、チラッと見えた朔がうずうずしているのを、僕は見逃さなかった。そしてそれは、僕だけでなく啓吾も。 「別に好きに呼べばいいけどさ。····んふっ、さっくんも呼ぶ?」 「え、いや、俺は別にどっちでも····」 「ふーん、じゃ今まで通りで──」 「折角だし、ついでに俺も名前で呼んでやる」 「「ついで····」」  啓吾と一緒にりっくんも笑った。しかも、『呼んでやる』だなんて随分上からじゃないか。珍しく動揺したのだろう、朔が八千代みたいになっている。 「ま、なんでもいいや。じゃーついでにぃ〜····俺も八千──」 「呼んだら殺す」 「はぁぁ!? なんっでだよ!!? ま〜だ嫌なの?」 「()じゃなくて()()なんだよ。名前呼び(それ)は結人だけの特権だからな」  そう言って微笑む八千代に、僕は心臓を射貫かれた。まさに、ズキュンってやつだ。  僕の腰を持ってピストンしたまま、雄の顔でふわっと微笑む。多分、一生僕にしか見せない表情(かお)だ。  僕は枕を手繰り寄せ、顔を覆って隠れた。顔どころか、耳や肩まで熱い。文句を垂れている啓吾には悪いが、僕は今、とっても浮かれている。  皆の距離がまた縮まって、僕が八千代の特別だと再認識させられて、あまつさえ皆に求められて愛されて、幸せだ。ここがピークでもいいと思えるくらい、幸せに浸っている。

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