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犬
マジカルペンが煌めき閃光が自分を襲う。フロイドはすぐさま『バインド・ザ・ハート』を放とうとするも不発し相手のユニーク魔法を食らってしまった。
「、ぐっ、あ、、」
「っ、やった!ついに俺のユニーク魔法を当ててやったぜ!!」
膝から崩れ落ち両手を床に着け肩を震わせるフロイドに、対峙していた生徒ら数名が沸く。
「リーチ弟!!テメーが今日不調だってのはここ数日見張ってたから知ってんだよ!」
「案の定、お前の厄介なユニーク魔法は発動しなかったみてぇだなっ」
「この間の恨み、晴らさせてもらうぜっ!」
「…、、く、ぅ、」
苦し気な声を出すフロイドに魔法を放った生徒が興奮しながら駆け寄る。他の生徒らもそれに続きフロイドを取り囲んだ。
「どうだ、リーチ弟!?どんなヤツも大人しくなる俺のユニーク魔法『借りてきた犬』は!!」
自信満々意気揚々と言い放ったその生徒。フロイドの前に立ちシャツに手を伸ばすと胸倉をグイッと掴み顔を上にあげさせた。
と……
「……や、な…ぁに?…ひっ。こ、こわい〰️〰️っ」
犬耳を伏せ(幻覚)ぷるぷると怯えたようにタレ目の瞳に涙を浮かべる大型犬のようなフロイドがいた。
ずがーーーーーんっ
咄嗟に手を離し後ずさる生徒。周りにいた生徒らも「なんだ?」「どうした?」とフロイドの顔を覗き込むと同様の衝撃を受け仰け反った。
「………ヤベ、ムリだ。俺、犬好きなんだよっ」
「…俺もだ」
「俺なんて実家の飼い犬思い出したぜっ」
「はあ?何言ってんだよ!?せっかくのチャンスなんだぞ?」
「じゃあ、お前やれよっ」
「えっ、いや、、、」
「俺、ムリだ。やれねぇし。むしろギュッてしてやりたい」
「俺も俺も!あんな怯えてんの放っておけるかよ」
皆の視線がまたもやフロイドに集まる。その様子を萎縮したように上目遣いで見ていたフロイドだったが更に怯え大きな身体を縮こませる。
「…ぐあ、ムリ」
「と、とりあえず安心させた方がいいんじゃねぇか?」
「そ、そうだな。そうしよう」
「ほ~ら、俺たち怖くなんてないんだよ~」
「いい子いい子してあげるから、こっちおいで~」
にこにことひきつった笑顔を貼り付かせじりじりと近づく生徒らに、ますます犬耳を伏せ(幻覚)迫り来る手から逃れようとするフロイド。
「…や…だ。やだ、やだ、やだあっ。じぇ~どぉ、」
と助けを求めるようにここにいない片割れの名を呼んだ。
ドカンッッ
突然の破壊音と共に部屋の扉がふっ飛び長身の男の姿が現れる。その後ろには先の男より少し背の低い眼鏡の男の姿もある。
「ふふふ。僕のフロイドがお邪魔しているそうですね」
「ジェイドお前、学園の備品を壊すバカがいますか」
「おやおや。それは申し訳ありません。ですが、そちらの請求でしたらこちらの方々にされればよろしいかと」
「ふむ。それもそうですね。うちのフロイドがお世話になったようですし?」
ズカズカと部屋に押し入って来た二人をその場にいた生徒らはよーく知っていた。そもそもの元凶の内の二人であるからだ。それなのに自分が壊した扉の請求をニコニコと笑顔で生徒らに擦り付けようとするオクタヴィネル副寮長ジェイド・リーチと、それを同じく胡散臭い笑顔で了承するオクタヴィネル寮長アズール・アーシェングロット。二人とも笑顔ではあるがその目が笑っていないことと、オクタヴィネルの凶悪三人組が揃ってしまったことに、今回の計画が失敗したことを生徒らは悟った。
「ま、待てっ。俺らはリーチ弟にまだ危害を加えていないんだっ」
「“ まだ ”ですか。それはそれは間に合って良かったです」
胸に手をあてにっこりと微笑むジェイドに背筋がゾクリとする生徒ら。
「い、いや、違うんだ。そうじゃなくって」
「何が違うと言うのです?」
眼鏡のブリッジをあげ見下すように瞳を細めるアズールに生徒らは頭から凍り付けにされたように固まった。
「あ…」「う…」とまともに喋れなくなった彼らにジェイドはゆっくりと口を開く。
「それで?フロイドはどこです?」
普段は目障りのよいテノールに険を含ませ訊ねるジェイド。途端に体をビクッと震わせた生徒らは隠していたモノを差し出すように二手に分かれた。
そこにいたのは、ぷるぷると震え目をぎゅっと瞑るフロイド。
その様子に少しの違和感を覚えたが特に外傷もないようで安心したジェイドは「フロイド」と優しく呼びかけた。
その声にぴんと立ち上がる犬耳(幻覚)。ばっと顔をあげジェイドを見つけるとフロイドは「じぇいどぉ♡」と満面の笑顔になる。そしてジェイドに向かって飛びつくように抱きつくと嬉しそうにぶんぶんと尻尾を振った(幻覚)。
「……ああ、リーチ弟…」
「…よかったな。リーチ弟…」
「……やっぱリーチ兄(飼い主)が一番なんだな」
「…そう…だな」
寂しさと安堵が混じった複雑な想いで見守る生徒らに「どう言うことか説明してもらいましょうか?」とアズールの圧の強い笑顔が向けられた。
その間にもフロイドの「わ~い、じぇいどだぁ♡じぇいどすきすき~♡」のハグが止まらない。ちゅっちゅっとちゅーの雨をジェイドの顔いっぱいに降らす。普段からそういったことをフロイドにされていたジェイドは「もうフロイドったら。仕方ありませんね」と困っていないくせに困ったような顔でフロイドの好きにさせていた。
だが、段々とフロイドの息づかいがアヤシクなっていく。ぐいぐいと押しつけられる腰の中心は硬く芯を持ち始めていた。
「どうしましょう?アズール」
「? どうしました?」
「フロイドが発情してしまいました」
「は?」
生徒らと『お話』中だったアズール。ジェイドの声に振り返れば、ジェイドをぎゅっと抱きしめたままのフロイドがヘコヘコと彼に腰を押しあてている。事実フロイドは大好きなジェイドの匂いと体温に盛ってしまったのだ。それを抵抗もせず受け止めているジェイドは楽しんでいるようにしか見えない。
「…面白がってるんじゃありませんよ、ジェイド」
「おや、心外です」
「こんな人がいる前でおっ始めないでくださいよ?」
「ふふ。それはフロイド次第です」
「お前次第だ!バカっ!とっとと、そいつを連れて帰れ!!」
「んふふ。かしこまりました」
くすくすと笑うジェイドだったが力強く抱きつくフロイドを引き剥がすことができない。
「フロイド。離してください」
「、やだ、」
「部屋に帰りましょう?」
「いやだっ」
「ここでは出来ませんよ?」
「やぁだ!ここでする!いますぐしたい!、、ねえ、じぇいど、だめぇ?」
「………………………いいですよ」
「いいわけあるか!!」
フロイドの甘えるような声とねだるような瞳にあがらいきれず流されてしまうジェイド。それを見ていたアズールの拳固が二人に落ちる。
「いったあ~~~っ」
「痛いです」
「ここでするなと言っているだろう。バカども」
「い~じゃん。あずーるのけち。いんけんたこ」
「………ふ、ふふ」
「……」
堪えきれず笑みをこぼすジェイドをぎっと睨み、アズールは減らず口を叩くフロイドの首根っこを掴んでポイっと生徒らの方に放り投げた。突然のことにきょとんとしていたフロイドだったが、ジェイドから引き離され知らない生徒らの輪に投げ込まれたのだと分かるとぷるぷると震えだした。そして涙目になり「…じぇいどぉ」と情けない声を出して戻って来ようとする。が、アズールの「『待て』」の声で静止した。
「これはこれは、なかなか面白いユニーク魔法ですね」
「……アズール。意地悪がすぎますよ」
「何を。お前だってフロイドの様子が可笑しいのだろう」
「…いえ、そんなことは。…ふふ」
「笑いが抑えきれてないじゃないか、全く。フロイド『おいで』」
アズールの呼び声にぱあっと顔を輝かせ走り戻ってくるフロイド。すぐさまジェイドに抱きつきぷうっと頬を膨らませた。
「…あずーるのいじわる」
「意地悪ではありません。躾です」
しれっと言うアズールにフロイドはますます膨れっ面になる。そんな二人の間で微笑ましそうにしているジェイド。
「ふふ」
「…ひとりで面白がってるんじゃないよ、ジェイド」
「面白がってなんて。…ふふふ」
「はぁ。もういいです。さっさとそのフジツボのようにへばりついているそいつを連れて行きなさい」
「そうは言われましても、この通り身動きがとれませんので僕の意思だけではどうにも出来ません」
「そんなわけあるか。お前だって分かってるだろうに」
「さあ?何のことでしょう?」
「チッ。フロイド、ジェイドと一緒に部屋に戻りなさい」
「え~っ」
「『ハウス』だ。フロイド」
アズールの命令に背筋をしゃんとするフロイド。ジェイドの手を取ると「いこ。じぇいど」と言って手を引き部屋から飛び出していった。
はあやれやれと二人を見送ったアズールは逃げ出すことも出来ず立ち尽くしていた生徒らの方へ振り返る。
「さあでは、『お話』の続きをしましょうか」
「………最っ悪なんだけど」
「…おや?元に戻りましたか?フロイド」
ジェイドに背後から覆い被さりナカに全て出しきったところで我に返ったフロイド。部屋に戻るなりジェイドをベッドに押さえつけ慣らすこともせず身体を暴いた。そんな自分の無体に情けなさと怒りが沸いている。
「…戻ったけど。オレ、ジェイドにムリヤリとかしたくなかったのに。マジ、サイテー」
「そんなことありませんよ?必死で僕に欲情をぶつける貴方、とても可愛かったです」
「はあ?そんなの可愛いわけねぇじゃんっ」
「おや。ふふふ」
楽しそうに笑っているが、されるがままだったジェイドの身体の負担は大きかったに違いない。フロイドは体を起こすと、白濁で滑りの良くなったジェイドの内からゆっくりと自身の陰茎を引き抜いた。
「……ん、…」
「ごめんっ、ジェイド。痛かった?」
ジェイドの口から零れた声に焦ったフロイドだったが「…大丈夫です」の返事にほっとする。とは言えロクに解しもせず突っ込んだのだ。もしかしたら切れてしまっているかもしれない。心配になったフロイドは着衣のままお尻だけさらけ出してベッドにうつ伏せになっている(勿論やったのはフロイド) ジェイドの双丘を割り開いた。
「ち、ちょっとフロイド?何してるんです?」
「ん?、キズがないか見てる」
いきなりお尻を鷲掴みにされ自分では見ることが出来ない孔を晒され見られることにさすがのジェイドも羞恥心でいっぱいになる。「やめてください」とじたばた暴れてみるも「もうジェイド。危ないからじっとしてて」とフロイドに押さえつけられた。
目をぎゅっと瞑るジェイド。だがそうすると余計にフロイドのすることに意識が集中してしまう。フロイドの指が孔の淵をなぞりヒクつくそこをくぱりと開いた。すると先ほどナカに吐き出された精液がどろりと溢れ出す。その感覚にジェイドの胎の奥はきゅうと疼いた。
「…ん、…キズはないみたぁい」
「……ではもう、離してください…」
ジェイドのふるえる声に「ん~……」と答えるもののフロイドはそこから視線を外すことが出来ない。ごくりと喉を鳴らし吸い寄せられるように舌を押し宛てべろりと舐めた。
「ひゃっ。、な、なにしてるんですか!フロイド!そんなとこ舐めたらいけませんっ」
「えー、だって美味しそうだったんだもん。でもぉ、オレのセーエキ、まっず~いっっ」
フロイドの下から逃げ出し顔を真っ赤にして後ろを振り返ったジェイドだったが、本当に不味そうにしかめっ面をするフロイドに恥ずかしさも引っ込んで笑ってしまった。
「ふ、ふふ。、貴方、本当はまだ魔法が解けていないのでは?」
「さあ?どうだろうねぇ~」
にいっ、と口角をあげギザギザの歯を見せるのは先ほどの陸の可愛い生き物ではなく見慣れた海の獰猛な捕食生物だ。ジェイドはフロイドの頬を両手のひらで包み引き寄せるようにして口づけた。
「僕はフロイドの精液、美味しいと思いますよ」
「………なにそれ。煽ってんの?」
「さあ?どうでしょうね」
同じく口角をあげギザギザの歯を見せるジェイド。フロイドはジェイドの頬を両手のひらで掴み噛みつくように口づける。
そうして今度は自分の意思でジェイドを抱き、思う存分甘やかしセックスをしてあげたのだった。
おわり
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