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時を超えた地獄の楽園(本文)

 むかーし、むかし、長年にわたって戦をしていた国がありました。  男も女も強靭な肉体を持ち、磨き抜かれた刃を持って戦う赤の国と、生まれながらに特別な力を操る青の国。どちらも譲らぬその戦いは日に日に苛烈さを増し、国も民も疲弊していきました。  時が経てども経てども戦は終わらず、互いの国土が焦土と化し、恐怖と絶望ばかりが溢れ、喜びや豊かさなどはどこにもありません。奪われるばかりのそれに心を痛めていた青の国の末王子は、怪我をした民を治療するために向かった国境付近で、一人の青年と出会いました。  青年は一目で赤の国の者だとわかるほど逞しい身体を持ち、背中には王子には持つことすらできないのではないかと思うほど大きな剣がありました。敵の姿に身構えた王子でしたが、青年は王子に優しく微笑んで、その剣を抜こうとはしませんでした。 「話がしたい。王族でありながらここまで来るあなたになら、俺の願いも理解してもらえるだろう」  そう願う青年に王子は警戒を解くことはしませんでしたが、それでも青年が背負っていた剣を床に置いたのを見て、話くらいは聞くべきだろうと思い、頷いたのでした。  青年は「この戦を終わらせたい」と率直に言いました。それは王子も願っていることです。しかし、どれほど願おうと国が絡む以上、簡単なものではありません。戦を終わらせる方法が降伏であるのなら、民の命を預かっている王族としては頷くわけにはいかず、それは赤の国も同じでしょう。  終わらせたいという気持ちだけでは駄目なのだと瞼を伏せる王子に、青年は言いました。「終わらせたいという気持ちが、何よりも大切なのです」と。  国境付近であるとはいえ、敵の王子の前に単身で現れたその青年の言葉に、未来を確信するような言葉に、王子は諦めかけていた己を恥じ、そして目の前の青年を信じようとしたのです。  王子と青年は何度も何度も意見を交わし、どうすれば戦が終わるのか、民が豊かに生きることができるのかを考えました。そしてようやく平和への一歩を踏み出せると、希望を持って策を決行する待ち合わせ場所に王子が到着した時、王子めがけて赤の兵士たちが押し寄せてきました。その中心で指揮を執っていたのは青年で、王子はようやく、自分はずっと騙されていたのだと知ったのです。  王子を人質にとり、青の国へ攻め込む。優しいばかりで世間知らずな末王子は騙しやすく、すべては思惑通りと青年は笑みを浮かべましたが、王子の護衛をしていた兵士たちは一切動じることなく、すぐに王子を守るように囲み、混乱する王子の馬を走らせて青の国へ戻っていきます。追いかけてくる赤の兵士たちに幾つもの炎の玉や水の玉が襲い掛かり、動けるようになった時には既に王子の姿は僅かも見えませんでした。  赤の者と末の王子が頻繁に会っていることに、兄王子が気づいており、必ず守るよう護衛の兵に命じていたのです。  こうして王子を人質にとられるという難を退けることのできた青の国は、逆に赤の国へと攻め込んでいきました。長く続いた戦はそう簡単に終わることはありませんでしたが、長い長い攻防の末、ついに青の兵士によって城は陥落し、赤の国は滅亡したのです。  青の王は戦を終えた後も赤の民を虐げることはなく、荒れ果てた土地は徐々に緑を取り戻し、人々の顔には笑みが戻ってきました。  めでたし、めでたし。  と、言いたいところだが、このお伽噺には続きがある。そう、騙された末の王子の話だ。  無知であったが故の過ちであるが、それはひとえに民の安寧を願っての事。それは父たる青の王も、兄王子たちもわかっていたので、末の王子には許可なく城の外へ行くことを禁じるだけで、罰は与えなかった。しかし誰よりも自分を許すことのできなかった王子は、自分で自分に呪いをかけた。身体の動きはもちろん、心さえも固める石化の呪い。徐々に徐々に劣化し、およそ千年の時が経てば自然と砕け散るその呪いは、自死を禁じる青の王子が唯一取れる死の手段だった。  戦から随分と経った今も、青の城の奥深くには椅子に座った王子の石像があるとまことしやかにささやかれている。その真偽を知るのは、奥へ行くことを許された王族だけであった。  足音さえも消す柔らかで豪華な絨毯の上を一人の男が歩いていた。すれ違う多くの兵や侍従、女官たちが端に身を寄せ頭を垂れる中、男は王や王妃、王子たちといった王位継承権を持つ者達が住まう奥へと向かう。今日は予想以上に会議が長引いてしまった。早くしなければと歩調は速くなるが、その口元には抑えきれぬとばかりに柔らかな笑みが浮かんでいた。  腰辺りまである王族特融の輝く銀の髪を首横で緩く結び、青い瞳に眼鏡をかけた、美しく優美で冷たくも感じる彼の柔らかな笑みに、未だ独身の彼に愛されたいと願う者達が黄色い悲鳴を上げる。しかし当の男はそんな声も聞こえないとばかりに一瞥すらせず、奥の奥、槍を持った兵が両脇に控え守る扉の前で足を止めた。軽くノックをして中に入る。返事など、最初から期待していない。何より、ここは男――王太子に与えられた自室なのだから、遠慮も必要ないだろう。 「予定より遅くなってしまいましたね。良い子にしていましたか?」  部屋の奥に新しく用意した寝台へと向かう。薄水色の透けた天蓋を端に寄せて、視界に広がる光景に王太子はますます笑みを深めた。 「ぁ、あぁ……、も、……ぃ、ぁ……」  クチュ、クチュ、と淫らな水音に交じって、掠れた喘ぎ声が耳朶をくすぐる。王太子の視線の先では、王太子と同じ長い銀の髪を乱れさせた麗人が快楽に身を震わせていた。 「こんなにも蕩けて、随分と気持ちよさそうですね」  寝台に腰かけた王太子は、真っ赤に蕩け涙や涎でグチャグチャになった麗人の頬を愛おしげに撫でた。それすらも蕩けた身体には快楽となるのか、麗人はフルフルと震え、花芯からはトプリと蜜が零れ落ちる。 「も……、たすけ――んぁッ! アッ、アッ、アッ」  広く柔らかな寝台に似つかわしくない革の拘束具で両手を頭上にまとめられ、腰を浮かして快楽を逃すことさえ許さぬとばかりに寝台に繋がれている麗人は、涙を浮かべながら王太子を見上げ助けを求めた。しかし、その行為を罰するかのように、大きく広げられた股の中心、後孔をグチグチと責め立てていた石像の指が抜き差しする速度を速め、プックリと膨れた泣き所を容赦なく擦り上げる。 「辛いですか? でも、あなたが悪いのですよ? ルイ王子。ここから出てはいけないとあれほど言ったのに、それを破って逃げようとしたのですから」  悪いことをしたなら、お仕置きを受けるべきでしょう?  優しく、甘く微笑みながらも決して責めを止めようとはしない王太子に、ルイ王子と呼ばれた彼は絶望に顔を歪めた。その間もグチュグチュと容赦なく後孔を弄られ、まともな言葉を発することもできず、ただただ淫らな喘ぎが零れ落ちる。それが悲しくて、悔しくて、惨めで、そして何より快楽が辛くて、ルイ王子は流れ落ちる涙を止めることができない。  どうして、どうして自分は身動きできぬよう寝台に繋がれ、これ以上ないほど大きく股を開かされ、淫らな責めを受け続けているのだろう。この身は永遠に動くこともなく、砕けて終わる日を待っていたはずなのに。 「まだ〝どうして〟なんて、考えているのですか? 私が会議に行っている間中、ずっとこうして可愛がってあげていたのに、随分と余裕があるようですね」  まるでルイの頭の中を覗き込んだかのように言う王太子に、ルイは顔を真っ青にしていやいやと首を横に振った。これ以上されては壊れてしまう。 「ふふ、そんなに必死になって。そんなに嫌ですか? でも、こうして頭がグチャグチャになるのは、気持ちが良いでしょう?」  何を考える暇も与えられず、ただ快楽に身を震わせ、喘ぐ。痛みを感じないよう丁寧に、苦しくないよう、しかし快楽が消えぬよう強弱を調整して、飽きぬように責め方も変えて。 「可哀想なルイ。そうやって抗うから苦しいのですよ? ほら、何も考えず、お尻の快楽に身を委ねて。もう何も考えなくて良いのですよ」  あなたが国の為に戦った日から、もう数百年の時が経っている。ここは青の国だが、既にあなたは王子ではなく、しなければならない義務も無い。王太子がいるかぎりずっと、この部屋で快楽に身を委ねていれば良いのだ。 「アッ、アァッッ――、こ……し、て……ッ、おねが――ッッ、ぁぁぁッ」  なのに、この愛らしい唇は幾度も幾度も死を願うばかりで、王太子はため息をついた。 「そんなお願いをきくなら、そもそもあなたの石化を解除したりなどしませんよ。そうすれば、あなたはあと数年で砕け散っていたのですから」  城の奥でひっそりと、誰にも知られることなく砕けていただろう。そう願って、ルイ――お伽噺の末王子は自らに石化の呪いをかけたのだから。  だが、その静かな自死は叶えられなかった。まさか目の前の王太子が稀に見る膨大な力の持ち主で、ルイが全ての力を使ってかけた石化の呪いを解除することができるだなんて誰が想像しただろう。 「残念でしたね、ルイ。私があの奥部屋を見つけなければ、あなたの悲願は叶ったでしょうに。でも、あなたがどれだけ願っても時は戻らないし、離す気もありません。だって私には、幸運以外の何ものでもないのですから」  スゥッ、と軽く指を振れば、ルイの後孔をグチュグチュと弄っていた石像が動きを止め、ゆっくりと指を引き抜き部屋の隅へと移動した。先程まで中を満たしていたものを探すようにヒクヒクと収縮する後孔に、王太子が二本の指を入れて掻きまわす。 「あぁッ、アッ、ダメ、そこ――んぁッ!」 「石化で力を使い果たしたあなたは、もはや只人でしかなく、決して私の手の内から逃れることはできない。自死も当然許しませんし、私があなたを殺すことも、飽きることもない。ね? だからあなたはもう、諦めるしかないのです」  優しい声音で、子供をあやすように紡がれる――残酷な言葉。 「ずっと、気持ちの良いことだけを与えてあげましょう。頭がグズグズに蕩けて、怖いことも悲しいことも考えられなくなるように。あなたは石になってなお涙を流していましたけれど、流すなら快楽の涙にしなさい。その方がずっと良いでしょう?」  綺麗で、可愛いルイ。その純粋さゆえに騙され、利用され、そして自分に許しを与えることもできずに自らの滅びを選んだ。きっと罪の意識が、石になってなお涙を流させたのだろう。その涙が何にも興味を示さなかった王太子の関心を呼び覚ますなど夢にも思わずに。 「ぃゃ――ッ、ゃめッ……、もぉ、戻し……アァァッ」 「石像に? 確かに、私の力を使えばもう一度ルイを石像にすることはできますね。それで? また千年の時を石像として過ごして、砕ける日を待ち続けるのですか?」  そんなに砕けたいのなら、今すぐにでも砕いてあげますよ。うっそりと、王太子はルイの耳元で囁く。 「手足だけを石化して、砕いてあげます。大丈夫、痛みなど無いようにしますから。もちろん、死ぬことも無い。ただ手足が無くなるだけ。そうしたら、ルイは赤ん坊のように私に抱き上げられなければ移動することもできませんし、食べるにも飲むにも、何をするにしても私の手が必要になって、自分一人では何もできなくなる」  それは随分と魅力的な話だと笑う王太子が冗談を言っているようには見えなくて、ルイは「ヒッッ――」と小さく悲鳴を上げた。その間もずっと、後孔を弄る指は動きを止めない。 「そんなに怖がらないでください。大丈夫、あなたが怖がることなんてしませんから。それに、わざわざ手足を砕かずともすべてを私に依存させることなど造作もないことですし」  石化を解いてからずっとルイに恐怖を与え続けている王太子が自信満々に言ってのける。そしてルイの手や腰を拘束していた革を手早く外すと、それこそ赤ん坊のように脇の下に手を差し入れて抱き上げた。 「さぁ、ずっとこうしていたいですけど、お腹空いたでしょう? すぐに夕食を用意させますね」  石像と王太子の指で散々に弄られ蕩けたそこに、王太子は前だけを寛げて取り出した男根を当てる。掴んだルイの腰をゆっくりと下に降ろしながら、寝台の側に置いてあるベルを鳴らした。 「あぁぁッッ――、あっ、ぃやぁ……」  王太子がいない間もずっと石像に弄られ、休む暇も与えられなかったルイの身体は全くと言って良いほど力が入らず、ただ促されるままに腰を下ろすしかない。ズブズブと中を埋め尽くしていく凶悪なそれに背が仰け反るが、王太子の腕がしっかりと支えているため逃れることもできなかった。 「さぁルイ。私の肩につかまっていてくださいね」  ルイを下から串刺しにしている男とは思えぬほど優しい声音で囁きながら、王太子はルイの膝裏に腕を通して抱き上げ、立ち上がる。地に足がつかない恐怖と、グチュグチュと揺さぶられる快楽にピンッ、とルイの足の指が力んだ時、小さなノック音と共に数人の使用人たちが入ってきた。 「ゃッ……、ぁ、ぁぁッ……」  王太子は前を寛げているだけで衣服の乱れも無く、その前部分でさえルイの臀部で隠されているので羞恥などないのかもしれないが、抱き上げられたルイは布切れひとつ纏わぬ、生まれたままの姿で、後ろにはしっかりと王太子の逞しい男根を咥えさせられているのだと誰の目にも明らかだ。そんな淫らな姿を使用人たちに見られていると思うと、恥ずかしさで死んでしまいそうになる。この場から逃れたい、嫌だ嫌だとルイが全力で暴れるのに、まるで赤子の可愛らしい抵抗であるように王太子は微笑み、あやすようにジュブジュブと肉壁を擦り上げた。 「アァッ……、やッ、んんんんんッッ――」  弱いところを容赦なく擦られて、唇を噛んで声など出すまいと思っていたのに、それさえも脆く崩れ淫ら声が響き渡る。そんなルイを愛おしげに見つめて、王太子は優雅に腰かけた。  ただ優雅に夕食を摂ろうとする王太子と、配膳をする使用人たち。ごく普通の、城の中ならばよく見られる光景であるからこそ、余計にルイの淫らな姿が異質に映る。 「ルイが暮らしていた時代とは随分違うでしょうが、この時代の食事も美味しいでしょう? さぁ、まずはスープから」  そう言ってスープを含んだ王太子は、そのままルイに口づけた。ゆっくり、ゆっくりと温かいスープが流し込まれ、ルイは涙を浮かべながらもコクリと飲み込む。以前はスプーンで王太子が手ずから飲ませてくれていたが、ガクガクと震えるルイが何度も零すうちにこのような形がとられるようになった。ならば後孔の男根を抜いて普通に食べさせてくれたらよいのにと思うけれど、王太子は決してルイを膝の上から降ろそうとはせず、当然男根を抜くということもしなかった。 「んんッ……、ぃ、あ、ぁぁあッ……」 「ふふ、ルイ、そんなに腰を揺らしては落ちてしまいますよ。ほら、もっとこっちにおいで」  もう頭はグチャグチャで、逃げたいのか、無意識に快楽を追って腰を揺らめかせているのかルイ自身にもわからない。だが、抜けかけていたそれが腰を引き寄せられると同時に勢いよく奥へ突き入れられて、ルイはガクガクと震えながら背をのけぞらせた。チカチカと視界が点滅して、ビュクリと薄まった白濁が二人の腹を濡らす。 「そう、何も我慢する必要はありません。たくさん乱れて、たくさんイって、そうして何もかもを忘れて、ただひたすらに気持ちの良い事だけを感じていれば良いのです。あなたの世界には私と快楽だけが存在していれば良いのですよ」  眠る時も、食事をする時も、身を清めている時も、排泄する時も、王太子を待っている時も、ずっと、ずーっと快楽に身を震わせ、頬を赤く染めていればいい。そうすれば、彼が己を石化してしまうほどの絶望も苦しみも痛みも、何も感じないですむ。  この部屋に閉じ込めて、すべてを王太子の手で与えて。そしてルイの世界は王太子がいなければ成り立たないようにするのだ。王太子だけが存在する、ルイの世界。それはなんと甘美な誘惑だろうか。 「ぃゃ……、やぁ……ッッんぁッ」  快楽で顔をグシャグシャにしながら、それでも懲りずに嫌だ嫌だと首を横に振るルイの泣き所をコンコンと擦ってやる。そうすればルイの唇はすぐに喘ぎ声を零し、否定の言葉など紡がなくなるのだ。 「諦めなさい。私があの奥部屋であなたを見つけたその瞬間から、あなたは私のものだ」  抗えぬ運命に爪をたてるより、溺れてしまった方が幸せだ。そう囁くのは、いったい誰だろうか。  ゆるゆると泣き所を擦っては、時折突き上げつつ、幾度も幾度も口移しで無理矢理に食事を与える。そしてあらかた食べ終えさせると、王太子は軽々とルイを持ち上げて、男根を後孔に突き立てたまま奥の主寝室へと向かった。  トサリと柔らかな寝台に横たえられた瞬間、今までのは子供のままごとだったとでもいうように激しく揺さぶられる。 「ンァッ! アァッ、や、アァッッ!」  肌がぶつかる乾いた音に、後孔から響く淫らな水音が交じり合う。大きく広げられた足は揺さぶられるままにブラブラと空を蹴り、背をのけぞらせれば待っていたとばかりに胸の頂を強く吸われた。 「あぁあぁぁッッ――」  ぶしゅッ、ぐちゅッ、と花芯はまるでお漏らしをしたかのように潮を噴きつづけ、美しく整えられていた敷布を濡らし、皺を刻んだ。 「可愛いですね、ルイ。快楽に素直で、上手に潮もお漏らしして」 「や、ぃゃッ……、んんんんんッッ」  言わないで、と涙を浮かべながら首を横にふるルイが可愛くて可愛くて、王太子は思わず貪るようにして腰を突き上げた。両手を寝台に縫い付けて、勢いよく唇を重ねては舌を潜り込ませ、逃げる舌を無理矢理に絡める。 「良い子。そう、我慢なんてしなくて良いのです。気持ちいいことだけを感じて、余計なものは忘れてしまいなさい。あなたに必要なものはすべて、私が与えてあげますから」  嫌だ嫌だと幼子のように首を横に振るルイの両頬を包み、王太子はうっそりと笑う。その恐ろしい笑みにガタガタと震えるルイを寝台に縫い付けた。

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