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安心させる声

泣くな。 こんな事で泣くな。 祐羽は自分の想像で落ち込んだ自分を心で励ました。 そしてグイッと目元の涙を拭った。 まだ起きてもいない出来事に心が痛い。 九条にされた仕打ちとは別に、これからの事が大きくのし掛かってくる。 暴力や性的な事に縁の無かった自分が、恐ろしい経験を積んで、心身ともに弱っていた。 そして、今は家に帰れるかも分からない。 その当たり前の様にあった家族を懐かしんで涙に暮れれば、それはそれで今の自分を受け入れて貰えるかも分からないのだ。 どうしたらいいのか。 そればかりが頭を駆け巡る。 「帰りたい、ですっ…。お願いします。帰らせて下さい…」 九条を見上げて再び頭を下げると、いきなり頭に片方の掌が置かれた。 九条の大きな手からすると、祐羽の頭など小さく捻り潰せる程だ。 まさかそんな事はされまいと思いながらも、突然の事で涙が引っ込んでしまった。 ドキドキと高鳴る心臓と、半ばプチパニックに陥った。 「帰らせてやる」 そんな祐羽に、九条が聞いたことも無いような声音で言った。 「…安心しろ」 その言葉に、祐羽はゆっくりと顔を上げた。

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