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第183話 遅刻

「ゆうくーん?!」 何処か遠くで母・香織の声がする。 でも瞼は開かないし、意識もまだ揺蕩っている。 暫くするとコンコンという音の後ドアが開く音がした。 そして眠る祐羽の側に人の気配がしたと思うと、優しい声が掛けられた。 「起きないと~、ほら遅れちゃうわよ!?」 「ん…っ、…?」 肩をトントンと軽く叩かれて、意識が覚醒していく。 うっすら目を開けて閉じる。 香織がカーテンを開けたので、室内は一気に明るくなり眩しくて思わず目元に手をやった。 遮光した祐羽に香織の声が飛ぶ。 「ちょっとちょっと、本当に時間ギリギリなんだから!」 「え?」 眠たくて眠たくて仕方ないが、そう言われては目を開けるしかない。 祐羽が壁に掛けている時計に目をやると、まさかの時間に針があった。 「わあぁぁっ!!本当だ!大変起きなくちゃ!!」 「目覚まし忘れてたの?」 「昨日疲れてたから忘れてた!お母さんもう少し早く起こしてくれたら良かったのにぃ~!」 ベッドから飛び起きると半ベソかきながら慌ててクローゼットへ向かう。 「そう言われても~いつも自分で起きてくるから、時間見てなかったのよぉ」 「とにかく急がないと~!」 制服に着替える息子に「ご飯とお味噌汁、もう入れておくからね」と言いながら部屋を出ていった。 遅刻してしまうと焦る祐羽は、鞄を持つと部屋を出た。 それから大慌てで朝食と身支度を整えると「行ってきま~す!!」と学校を目指した。

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