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第193話 疑問
自分と九条を乗せた車は、市内の高級ホテルのロータリーへと横付けされた。
今回あった福岡での仕事は、大手食品企業との提携についての最後の押しの為に来たのだ。
ほぼ形になったが、最終的な話し合いは明日になり、こうして漸くホテルへと戻ってきたのだ。
九条の泊まる特別ロイヤルスウィートの室内にあるテーブルを囲み弁護士、担当社員と眞山が書類のチェックと明日の確認をする。
九条もソファに座り確認と指示を出していた。
「また明日の会議も宜しくお願い致します」
「失礼します」
社員と弁護士が自分に宛がわれた部屋へと戻っていく。
自分も戻るが、その前に秘書として部下として九条の身辺を整える。
そうしている間に眞山の視線が九条の動きを捕らえた。
「…?」
社長、スマホを眺めてどうしたんだろうか?
あんな風に考え込む様な表情で、スマホを見つめる姿は珍しい。
そういえば今朝、車の中と会議前にも見てたな…。
「眞山」
すると急に九条に声を掛けられて、ずっと見ていたのがバレたのかと緊張する。
「はい。どうされましたか?」
平静を装い応えると、ほんの僅か逡巡してから九条が問い掛けてきた。
「中瀬から何か連絡はあったか?」
中瀬から?何故?
「いえ。ありませんが?」
疑問に思いつつ返すと九条は「ならいい」と答えると「ご苦労だったな。明日も頼んだぞ」と続けた。
「はい、お疲れ様でした。明日は朝9時半に出発ですので。それでは失礼致します」
眞山は頭に疑問を浮かべつつも大人しく頭を下げて退室した。
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