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第228話 異世界の人

今日はどうなるかと思っていたが、美味しい料理もご馳走になったし九条の新しい表情の発見できた。 なんか凄くいい日になったかも。 なんて思いつつ少しだけ隣を見ると、まさかの九条と目が合う。 「!!」 九条と目が合っただけなのに、ドキッと心臓が高鳴り痛い。 今までは恐怖からの物が大きかったが、明らかに九条の男らしさとか別のところで反応してしまった。 顔が整っているのは分かってはいたが、外のネオン等の明かりが車内を照らし、九条をより引き立てているせいだろうか。 静か過ぎる空間に何とも香しい匂いを纏わせた美形の男が自分の隣に座っているのだ。 異世界にでも迷い込んだ様な不思議な感覚に、頭の中が混乱しそうになる。 それでも九条が居るだけで異世界も有り得るのではないかと、思えてしまう。 スラリと流れる鼻梁にセクシーな唇、形の良い顎からの輪郭のライン。 喉仏など自分と比べると全く違ってしっかり出ていて、男臭い。 睫毛が影を落としている目元もクールだ。 カッコイイ…。 「何だ」 「っ!いえ、何でもないですっ」 気になってぼーっと見てしまっていた事に気づかれる。 あまり見ていては失礼だろう。 祐羽は両手を眼前で振って否定すると、膝に両手を置き直した。 それから視線をさりげなく窓の外へと向けた。 向けたが、窓ガラスに反射する九条を盗み見る。 気になってしまうのだから、見てしまうのは仕方がない。 車内は広いとはいえ、九条は直ぐ隣に座っているのだからおかしな程に心拍数が…。 聴こえたらどうしよう、と無意味な心配が募る。 しかも元々、乗り物に弱い祐羽は疲れと緊張も手伝ってか、次第に酔ってきた。 おまけに誤魔化す為に、窓の反射で九条を観察するという作戦がよろしくなかった。 流れる景色と反射する車内のせいで、視界がブレる。 …なんか気持ち悪くなりそう。 かといって迷惑はかけられない。 そこで大人しく祐羽は目を閉じた。 そしてなんとかやり過ごそうと努力をするが、次第に頭がぼんやりとしてくる。 丁度良い車内の温度と揺れる車、心身疲れているし、もう閉じた目を開けたくない。 …眠たい…。 そのうち祐羽は段々と睡魔に囚われ意識が遠退いていった。

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