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番外編『九条一臣は恋の話しをしない』

※九条の高校時代の心がどこか寂しくて、満たされてない話し。 ※女性関係(モブ)若干出ます。 ※ラストちょっぴり九条と祐羽の未来のおまけアリ。 ■■■■■ イケメン・リア充爆発しろとはよく言うが、それを絵に描いた様な一臣の学生時代だった。 しかし、それは本人以外が羨ましく思うだけの青春時代だ。 童貞などとっくに卒業してそれなりの経験をしていた一臣は、高校の同級生が彼女がどうとか浮かれたりしている頃には面倒事が嫌で、ほぼプロの女しか相手をしていなかった。 その女は叔父などが紹介というか、押しつけてきた女だ。 吟味してくれていたので体だけと割り切った関係として面倒もない相手…のはずだった。 だが、大抵の場合は相手が一臣に本気になってしまうので、困る事もしばしばであった。 性欲さえ発散させてくれるなら誰でも良くて、その中でも気持ちよく射精出来る相手なら重宝した。 それが面倒の始まりになる。 数回体を合わせただけで、直ぐに自分を特別だと思いつけあがるのだから、困ったものだ。 困ったと言えば学校でも然り。 「九条くん。こっち来て…」 「…お前教師だろ」 あからさまな誘いを受けて、一臣は呆れる。 若い女教師は性欲が溜まっていて仕方ないのかと思えば、成熟した女教師もやたらと流し目を寄越すし気のせいかボディタッチも多い。 女子生徒はというと、好きだ好きだと周波を送ってくるしで一臣の生活はうんざりの塊だった。 俺がいつも盛ってるとか思ってるのか、コイツら。 とはいいつつ、一臣も若い男である以上は適度に発散させてはいた。 いたが…。 気持ちいいけど、満足しねぇんだよ…。 ベットの上。 失神した女の隣で一臣は座ったままボンヤリとする。 この時間ほど虚無感に包まれる事は無い。 敷かれたレール、親の跡を継ぐこと。 それ以外の事も一臣なりに考えてはいるのだが、だからといってそれが何時まで自分を楽しませてくれるのか…。 まだ見えない未来が正直怖い。 自分の場合は他人の様に普通の人生とは違う。 特殊なそれは生きる意味では楽しませてくれるのかもしれない。 けれど、それで満足出来るのか? 満たされる事になるのか? 「ん…」 隣に寝ていた女が熱が逃げて寒くなったのか、手をさ迷わせる。 その綺麗な指先が一臣を探り当てた。 バシッ 一臣は無言でその手を払い除けると静かに立ち上がった。 シャワーを終えて部屋を出ると、そこに待つ世話係を引き連れて車へと向かう。 性欲を発散させて落ち着いた気持ちを逆撫でされた気分だ。 恋人など求めていない。 特別だと思われるのは癪に触る、許せない。 死んでも早い。 俺に好意を持って貰えると思う時点で、そいつは有り得ない。 決めるのは俺だから。 血が無駄に騒いだ。 今夜はこれからどうしようか…。

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