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今回の成人式へ出席する議員の金尾が使い易いように、こちらへ引き入れろという物だった。
そこで金尾について徹底的に調べ、経歴から家族構成から交遊関係。
そのほか議員活動等、洗いざらいの情報を集めた。
その情報収拾を任せていた裏も扱える探偵が金尾の贔屓にしている料亭で支倉組幹部と密談を交わす約束をしていると知ったのだ。
そこの料亭は秘密厳守のお忍びにはうってつけ、一見さんお断り。
なので今回、組関係の知人の紹介で店で食事を取った。
髪の色を変えてカラコンさえすれば、ハーフのイケメン留学生の完成だ。
こちらの素性は隠し、若女将に挨拶に来させる。
一臣は留学生活の思い出作りでここへ来たという設定だ。
あとは一臣がほんの少しセックスアピールさえすれば靡かないわけがない。
若女将が戻る際に廊下で捕まえて、甘く囁けば直ぐに頬を染めた。
その後は簡単だ。
夜ホテルで激しく抱いてやり、頼み事をすれば良いだけだった。
金尾と支倉組幹部の盗撮の協力を快諾した。
あとは盗撮に成功したら女には「寂しいけれど帰国しなきゃいけないんだ」と 下手な演技で別れて来た。
女は偽の留学生との素敵な思い出と裏切れない一途さ、そして盗撮をしたという誰にも決して言えない秘密を守って生きていくだろう。
誰にも言わない、言えないのは好都合だった。
これは父・英二からのヤクザな世界への第一歩の課題だった。
成人になったからといって、こんなハードな条件を出す親は何処にもいないだろう。
帰ってからの英二の喜ぶ顔が目に浮かんで、早くもウンザリする。
また手の中で携帯が震えた。
友人と一緒に撮った画像が添付されている。
そこには大学の友人と三人で撮ったスーツ姿の自分が居た。
心なしか自分の表情がいつもより明るい。
こんな穏やかな日常は、これからは少なくなっていくんだろうな…と一臣は窓の外へと視線をやった。
心は静かに凪いでいた。
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