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旅の先で

祐羽を乗せた車は九条の自宅へ寄ることはなく、そのまま駅へと向かった。 九条は昨夜本当に別件があったらしく、直接駅へ行ったらしい。 最寄り駅まで少しの時間、車内には運転手の他に自分と眞山、中瀬の4人。 普段、九条付きの為会っても会話らしい会話は殆どしない眞山と一緒は少しだけ緊張した。 だが、このヤクザという人間と時間を共にする非日常にも慣れてきていた祐羽は、思いきって話し掛けた。 「あのっ、旅程表わざわざ作って下さって、ありがとうございました」 「いえ。これも仕事のうちですし、ご両親に安心して貰いスムーズに送り出して貰えるならお安いご用ですよ」 「そう言って頂けると…。お父さん本当に過保護なんで、旅行に行けないかと思って本当に困ってたんです」 祐羽が小さく溜め息をつくと、眞山がニコリと笑った。 「それは良かった。あなたの為にすることは引いては社長の為でもありますから。なにせ私は九条社長の従順な秘書兼右腕ですから」 その冗談めかした口調に祐羽は思わず笑った。 そんな会話をしているうちに車はあっという間に駅のロータリーへと着いた。 駅前は普段タクシーや一般車でごった返すのだが、見事に一画だけが遠巻きにされていた。 その黒の高級車が並ぶ場所へと祐羽達の乗った車が当たり前の様に停車する。 ドアが直ぐ様外から開けられて眞山が降りると、祐羽と中瀬も同じ様に開けられたドアから駅前に降り立った。 「来たか」 「九条さん…!」 祐羽達が降りたと同時に別の車のドアが開けられて、中から九条が長い足を滑らせて目の前に立った。 1週間振りに見る恋人は、相変わらず欲目無しでも文句なくカッコイイ。 未だに会う度にドキドキさせられるのだから、九条は凄いフェロモンでも振り撒いているに違いない。 それがまさかのサングラス着用で、祐羽の心臓は恐ろしい程に跳ねた。 ぼ、僕の心臓、ヤバイかも…!! そんな事を考えていると、直ぐに「行くぞ」と肩を抱かれた。 それから背中に当てられた大きな手に促されて、祐羽は九条と共に組員に囲まれて駅構内へと入った。

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