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中瀬と外崎の優しさに触れて勇気を出した祐羽は、その後用意された朝食のパンを食べた。
食べて力を蓄えて、加藤に今度こそ負けないと強く心に決める。
それは他のふたりも同じで、食べながら三人は今後の話をした。
「昨日の夜、あの加藤とかいう男が呼ばれ戻ったんだな?」
「はい。集合が掛かったみたいで…」
昨夜の恐ろしい出来事は避けて、トイレの見張りに来ていた途中で呼ばれて戻ったとだけ伝えた。
もう過ぎたことであったし、余計な話を聞かせてこれ以上の心配は掛けたくなかった。
次に会った時は絶対にどんな方法を使ってでも抵抗して、やっつけてやる!と決めたのだから。
「おそらく何か動きがあったんだろうな」
「そうだね。作戦会議か、それとも隆成さん達が…?」
九条さん達が犯人と連絡を取ったのかな?
それだったら嬉しいけど…。
「それにしては動きが無いですね」
期待に胸を膨らませた祐羽だったが、中瀬の言葉に一気に気持ちが萎れる。
「確かにね。夜は車が二台ほど出ていったみたいだけど」
「帰ってきた様子は無いですね。ということは、今あいつらの人数は減ってるはず」
中瀬が鋭い目つきでドアを見た。
逃げるなら相手の数が少ないに限るとはいえ、監禁され武器も無く、力勝負でも負ける自分達がこの場所から胸を張って出ていける確率は低い。
ここがどこかも分からない山の中。
圧倒的不利だった。
「でも、チャンスには代わりない。だからもし相手側に隙があれば誰かひとりでも逃げて会長達に報せるんだ!」
「逃げられる可能性があるなら、残った人間はその人を全力で守る」
祐羽がふたりの言葉に頷くと、中瀬が両肩を掴んできた。
「分かったな?その時は前だけ見て、逃げるんだぞ!!」
「振り向いてはダメだから。残った人間の為にも逃げて九条さん達に知らせて迎えに来て欲しい」
外崎も祐羽の顔を見つめながらそんなことを言う。
まるで三人で一緒にここを出られないと言っているようで、不安な顔で祐羽は首を振った。
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