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第29話 やさしい愛撫

「あ、あああ・・・、許してくれ、許して」  何時間も時間が経ったと思う。多くの時間をかけて、譲は胸だけを執拗に弄られていた。  刺激を失った乳首はジクジクと疼いており、熱を帯びている。  強く摘んで貰えばきっと気持ちいい。  譲は胸を弄られただけで射精できるようになった。  感じてしまう自分が悔しくて、涙が流れる。 「まだだよ」  たっぷりと油を塗られた指が腫れ上がった乳首をぷるぷると揺らし、胸に感じる細やかな振動が下半身に響いてくる。 「んぐ・・・うぅうううっ」  奥歯を噛み締めた瞬間に、薄まった精液がぷしゃりと噴射した。 「はぁ、はぁ、ぅ」 「休憩しよう。起きたらまた再開するよ。譲の身体がわかってくれるように、全部を触ってあげないといけないからね」  ヴィクトルはベッドを降りて、ぬらついた指を拭った。  その後、眠りから覚めても状況は変わっていなかった。  ヴィクトルが付きっきりでいたために、弱みを見せたくないと頑張っていた譲だが、力尽きて気を失い、微睡みから解放された途端に覚えさせられた疼きがぶり返した。  肩と股関節が軋む。腕も脚を痛い。身体の下半分には、鉛を詰め込まれたような重怠さを感じた。  譲の覚醒に気づき、ヴィクトルがベッドに上がる。 「さあ、続きだ」  ヴィクトルは失くした方の脚の腿を持ち上げ、奥の窄まりを露出させた。  指で肉環の皺をなぞられて、悪寒が走る。 「ひっ、そこはいやだ」 「すぐに思い直すと思うよ」  尻に潤滑油が垂らされ、譲は後孔を締めてしまう。  人肌に温められたぬるい油をまとい、ヴィクトルの中指がきつく閉じた穴に充てがわれた。 「やめろっ、挿れるなぁ・・・・・・っ」  そう叫ぶも虚しく、圧を加えられた入り口はじわじわと開き、指を迎え入れる。 「や、あ、」  指は奥へ奥へと侵入を止めない。痛みはないが、譲は異物感にのけ反った。 「ん・・・んっ、気持ち悪い。汚いから・・・」  逃れようと腰を引くと、ヴィクトルは抜けかかった指をぐちゅんと音を立てて押し込んだ。浅いところから、指で触れる最奥までをひと撫でされ、鳥肌が立つ。 「あっああ」 「譲のお腹の中は汚くないよ」  ヴィクトルはクチクチと内壁を探り、譲の顔を覗き込んだ。 「ほら問題ない。譲のここは洗浄したてだから、とても綺麗だよ」  ———何を言われたのだろうか。  頭が理解を拒否する。  譲の青ざめた顔に、ヴィクトルが衝撃を受けたように動きを止める。 「譲?」 「いつ・・・、まさか、俺の尻に指を突っ込むのも初めてじゃない?」 「数日おきに寝ている間に処理を。これまで不思議に思わなかった? 私なりに譲の自尊心を考慮したつもりだったんだけど、違ったかな? 指は使ったが、綺麗になったか確かめるために触れただけだよ。洗浄は薬液で充分に事足りる」  唖然として言葉も出ない。  鎖に繋がれていた朝。起床後の身体の怠さ。奇怪に思っていたあれやこれの、その幾つかの原因がこのためだった?  処理中に譲が目を覚さないように、ヴィクトルなら黙ったまま薬の一つや二つ平気で譲に服用させるだろう。  悪どい。だが・・・怒れない。嫌だと説明したところで通じないのだから、抗う気力になるはずの怒りが失せてしまった。  譲は抵抗力を根こそぎ奪われて、くたりと力を抜いた。 「良い子だ。わかってくれたんだね」  従順になった譲のナカで指が蠢いた。  ヴィクトルが緩んだ内側を捏ね回す。ゆっくりと優しく襞を撫でられ、抜き差しされる。 「ぅ、っ、く、ん」  痛めつけられていないからなのか。こんなにされても嫌悪しきれていないからなのか。  譲の声はふやけて頼りなくなる。 (・・・・・・感じてなんかない)  譲は顔を顰めて見せたが、欲するようにひくひくして絡みつこうとする肉筒の動きは誤魔化しようがなかった。 「こちらも触った方がいいのかな?」  ヴィクトルは尻を弄りながら、譲の屹立を握った。 「ゃ、あ、ああっ」  ペニスを扱かれ、きゅうっと後孔が締まる。 「あっ、あっ、う、やああっ」 「気持ちが良いなら気持ち良いと言いなさい」 「ん、ぅ、うう、ごめんなさ・・・・・・っ」 「謝れと言ってるんじゃないよ。素直に教えて欲しいだけだ」  勃ち上がったペニスの根元に、芯を持った熱い塊が生まれる。  もったりして熱い。そして疼いている。  不思議に思っていると、腹の内側から指で押し上げられ、譲の口から悲鳴にならない声が上がった。 「やあっ、ぁっ?!」 「ここが前立腺だ。膨れ上がって触り易くなったね。そういえば絵画クラブで淫具を挿れられていたけれど、譲は経験があったのかな?」 「な、ないっ」  譲は全力でかぶりを振る。振動を思い浮かべるだけで吐き気がした。 「とても感じていたから」  ヴィクトルが涼しい顔をして訊いてくる。  くちゅ、ぐちゅ、と前立腺を刺激されて譲は全身がひくついた。口を開けば嬌声が漏れ、でも答えないと、勘違いされてしまう。 「・・・あの時は・・・苦しかったし、殺してくれって思った」  真っ白になる頭を懸命に絞る。 「そう、でも今はどう?」 「今は・・・んあっ」  指が二本に増え、挟み込まれるように前立腺が揉まれた。 「ひっ、んぁ、ああっ、っ、いまは・・・苦しくなッ」 「それは良かった」  最後まで言い切れなかったが、ヴィクトルは微笑んだ。  譲は内股をびくびくと痙攣させる。 「も・・・っ、ぁ、・・・・・・ぁああっ」  強制的に射精感を煽られ、出口を求めた精液がどろりと噴射した。  ヴィクトルは白濁にまみれた鈴口を弄る。一番敏感になっている瞬間を刺激され、腰から爪先まで反り返って硬直した。ぴゅるぴゅると余韻のような体液が溢れる。 「ぁ、ああっ、触るなぁっっ」  離された指には糸が引く。 「うん、上手に出せたね。これから譲は性器を扱くだけじゃ射精できなくなるよ。射精するだけじゃ物足りなくなってしまうかもね」  どろどろの指を見せられて、譲は目を逸らした。 「っ、・・・どうして、なんで、俺に何をしたんだ・・・・・・っ」 「何にも。譲がお利口でいてくれるおかげだよ。ここも、乳首も、唇も、脚も、腕も、譲の全部は私に可愛がられるために存在している。素直じゃない頭もじきに良くなる」  喜ぶと思っているのか。  譲を愛するための時間は惜しまないよと言われて、差し込まれた二本の指で押し上げられた前立腺がひしゃげた。  愛撫が続行される。

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