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【俺には、どっちも大事な友だち!】
「なぁ伊月(イツキ)聞いてる?」
「聞いてる聞いてる!続けて〜」
「だからさ、俺やっぱどうにもゆっこだけ違って見えるんだよ。周りの女子とは違うっつーか、なんつーかこう…キラキラしてんの」
なんてことない朝の教室。
俺は今日も、こいつの恋バナに付き合わされてる。
「高校入ってもうずっと一緒にいんのにさぁ、全然気づかなかったんだよなぁ……最近になって〝なんかやけにこいつ眩しいな〟って見始めて、そしたらなんか目ぇ離せなくなって……なぁどうしよ伊月俺どうすればいい?」
「告っちゃえばいいじゃん」
「いやそんな簡単な話かよ!
だってもし告白断られたら今の関係崩れるんだぞ」
「じゃーゆっこちゃん誰かに取られてもいいわけ?」
「それは嫌だ」
「なら決まったも同然じゃない?」
「け、どさぁー……」
(うーん、やっぱりけーすけはヘタレだ)
大事なところでもう一歩が踏み出せない男、それがこいつ。
だからこそ、心配した校長先生が高い倍率の中けーすけを運命の人に選んだのかもしれないけど。
それと、後もうひとつの心配な点はーー
「まーた2人だけで話してー……なになに内緒の話?」
「あ、ゆっこちゃんおはよ!」
「お、おはようゆっこ!今日来るの早いな」
「ふふふ、今日いい感じに前髪成功してさ、早めに出てきちゃった。どう? めっちゃ良くないっ?」
「ほんとだ〜なんか違うかも、分け目が綺麗!」
「そうか? いつもと変わんねぇ」
「はいけーすけ最悪。どうせこのボンボン野郎にはいつも綺麗にしてるお洒落な子がお似合いですよーだ。
私には伊月だけよ〜あぁ大好き〜〜」
「俺もゆっこちゃん大好き!でも本命は高(タカ)くんだからごめんね?」
「いいのよ、高くんは別物だから。私の親友は伊月だけ」
「え、俺そこに入れてくんねぇの?」
「啓介は駄目、絶対入れてやんない」
「はぁー??」
そして始まるいつものけーすけの反論を右から左に流してると、ピロリンと震えるスマホ。
〝今日、また後で相談させて〟
そっと送り主を見ると、分け目から見える眉を下げながら軽く「えへへ」と笑ってる。
けーすけにバレないよう小さく頷いて〝いつものところね〟とスマホで返事をして。
黄色薔薇は、そんな 俺の大切なふたりの物語です。
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