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「はぁぁ、もう……」
校舎の裏庭、体育座りしながら大きな溜め息を吐く。
毛量の多いカツラにも、ヒラヒラ揺れるスカートにも大分慣れた。
いや慣れたくはないんだけど、毎日付けてりゃそりゃね!?
別に女装癖があるわけでも男の娘なわけでもない、ごくごく普通の一般男子。
それがなんで女装してるかって、話せば長くなるんだけど……
まぁ、簡単に言えば僕にトラウマがあるからだ。
男というものが点でダメ、自分も男のくせに。
いや笑えないよね、そうなんだよ笑えないんだよ。
それを指輪貰うとき校長先生に言ったら『なら女装すればよいじゃろ』ってその場で性別変えられちゃって、そのまま。
いいのって? まぁ…ここでは校長先生が一番偉いしね……
寮も女子寮。勿論1人部屋、僕襲うなんてこと絶対しないし問題なんかは起こしません。
この事を知ってるのは校長先生だけ。担任や生徒のみんなさえ知らない正にトップシークレット。
と言っても、カツラしか被ってないけどね。名前も中性的だし顔はよく女顔って言われてきたし、体毛も薄いし背も高くないし…なんか自分で言ってて傷つくな……
声は流石にバレるからあんまり話さないようにしてたら、いつの間にか「お人形」だの「高嶺の花」だの言われるようになってしまった。なんてことだ。
「こうやって素でお喋りできるのはミケだけだよ。
ぬあぁ僕のオアシスー」
「ニャ〜」
隣でゴロゴロ気持ちよさそうに鳴いてる猫。
入学して間もない頃、偶然この場所で出会った。ミケ猫だからミケ、単純。
普通に話せる唯一の相手だから、昼休みに放課後に暇さえあれば通ってしまってる。
僕結構お喋りなほうだからな、口寂しいのかも? みんなにも素の自分見せたら驚くんじゃないかな……
ーー本当は、他の薔薇たちと話してみたい。
今年は去年より薔薇と運命の人の動きが活発だ。まず赤が結ばれて次に絞り模様、緑、白、黄色と来て、最近紫が続いた。
他の薔薇は今どんな状況なのか・結ばれた薔薇はどうやって結ばれたのか、話を聞きたいけど……性別がばれそうで話せずじまい。
どの子が薔薇なのかは、なんとなく知ってるんだけどなぁ……
「はぁぁ……やっぱりこの学園では君だけか。
種族違うけどこれからも仲良くしてね」
「ニャ」
「ぇ、なに今返事した? 可愛い!ミケ言葉わかるの!?
って、ぁ、ごめ、逃げないでよ!」
感激のあまりワシッ!と掴んだのがいけなかったのか、暴れられすぐ離れていってしまう。
「あぁぁごめんってばミケちゃん、待って〜まだご飯持ってるよ〜〜」
その後ろをパタパタ追って
小さな体がピョンッと飛び乗った先を、見上げてーー
「ヒッ」
「ん? あれ、彩(アヤ)ちゃん?」
僕よりずっと高い背。明るくて人懐っこそうな声。
乗り心地がいいのか肩へ座ってしまった猫に楽しそうに接する、その人物は
(な、ななな、七井(ナナイ)……!?)
これまで一度も話したことがない、遠くから見ていた緋色の運命の人。
………って、あれ?
これって、もしかして次は僕の番だったりしますか??
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