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玄愛Ⅱ《炯side》5
その部屋のドアを開けると、俺の姿を見て綾が怒鳴った。
「…おっっせぇよ炯!!」
「…」
状況を確認する。
綾はドア付近に立っている。
山田は愁弥に抱きしめられて息を切らしてはだけている。
愁弥が…?
「哀沢…ちょうどよかった。山田に魅力があるか俺と綾で確かめようかなと思ったんだけど…続けていいか?」
そう挑発的な発言をして、愁弥が山田の耳を舐めた。
「ひやっ…ん…」
「愁弥…?」
普段の愁弥からは想像も出来ない発言と行動に俺は混乱した。
すると綾が山田たちに近づいて、俺を見て言う。
「ごめんね炯くん。うちの愁ちゃんお酒飲むといつもの優しい愁弥とは逆に攻めっぽくなんのよ。俺も楽しくなってきちゃってさぁ」
綾は愁弥から山田を奪い、山田を後ろから抱きしめて続けた。
「お前の仮彼氏の雅鷹くんは、キスしかされないし全く抱いてもらえないから自分に魅力が無いと不安がってるぜ?」
そして後ろから山田の両乳首を摘まんで弄り始める。
「あっ、ンンッ!だめっ…乳首摘ままない、でぇっ…」
「雅鷹のこの反応…食っていい?」
「や、…だぁっ」
俺は綾に近付き、山田を綾から引き剥がした。
「退け」
そして山田を抱き寄せて言った。
「こいつは俺のだ」
「へぇ。仮契約の仮彼氏なのに、本当の彼氏みたいなこと言うんだ」
「うるせぇ」
なにが山田が綾に抱かれても嫉妬しない、だ。
めちゃくちゃ腹が立つ。
「哀沢くんの匂い…この匂いだけで興奮する。俺なんかもう体おかしくて変なんだ…哀沢くん…お願い…イカせて…」
息を切らして顔を赤めて涙を溜めて絶頂を懇願する山田。
明らかに何かおかしい。
「…何飲ませた?」
「んー、叔父特性の媚薬酒なんだけど雅鷹との相性抜群らしく少し飲んだだけでこれだぜ。もう少し遅かったら挿れちまうぐらい可愛くてやばかったわ」
「お前まじで節操なしだな」
「炯くん目がこわーい。俺は愁ちゃん一筋だよん。どっちかというと雅鷹のこと攻めてたの愁弥だし」
そう言って綾は愁弥を抱きしめ、愁弥の服を脱がし始めながら言う。
「とっとと告白して抱いてやれば雅鷹も炯も満足でWin-Winなはずなのに、焦らしてるお前が悪いだろ。実は奥手なの?意外すぎ」
「てめぇとは違うんだよ」
「そっちの扉あけると布団が敷いてあるから、ご自由にどーぞ。雅鷹もう限界だしな。てか俺も限界。こっちはこっちでするからお構い無く」
綾にそう言われて、俺は山田を抱き上げて立ち上がり隣の部屋へ向かった。
「わぁ、お姫様だっこ?嬉しいー。本当の恋人みたい」
ケラケラと笑う山田を見て俺は少し呆れた。
貞操が危なかったっていうのにこいつは…
そして敷いてある布団の上に山田を置いた。
「お布団気持ちいー」
「山田…少し水飲め」
俺は置いてあったミネラルウォーターのペットボトルの蓋を開けて山田に渡した。
「わ、なんか…手震えちゃう。溢れてる…?酔ってるのかなぁ。お酒強いはずなんだけど」
山田はそれを飲もうとするが、手が震えて水が飲めずたくさん溢れてしまった。
山田の服が水で濡れたことでさえ興奮している俺がいた。
俺は自分の口にミネラルウォーターを含んで、それを口移しで山田に飲ませた。
飲み終わっても唇を放さず、舌と舌を絡ませた。
「ん…っ、は…ぁ…」
しばらくしてキスを終わりにすると、山田は膝立ちで俺に股がり涙を溜めて言った。
「どうしたら哀沢くんに好きになってもらえるのかな?俺、三科雅彦と違って性格曲がってるし、セクシーじゃないし、子供っぽいし、いいとこがあるとしたら金持ちってだけだし」
淡々と自分のダメな部分を語り始める。
「哀沢くんちで抱かれた時、何かしちゃったかな?相性よくなかったのかな?魅力無いのかなとか考えて…」
山田の目からはポロポロと涙が落ちる。
その泣いてる姿でさえ、愛しいと感じてしまうなんて俺は不謹慎だなと思った。
「仮契約だからいつか契約破棄されちゃうのかな…俺どうしたら好きになってもらえるのかな?やっぱり俺じゃダメなのかな…」
このままだと永遠と自虐し続けそうだなと思い、俺は山田の涙を拭って深くため息をついた。
「こんなことになるなんてな…」
「俺ずっと哀沢くんとしたかったの。キスだけじゃ物足りなかった。哀沢くんのこと好きでいられるだけで充分なはずなのに…それだけでいいはずなのに求め…っ」
うるさいから山田が話している途中で唇で口をふさいでやった。
しばらくキスをしてから山田を見つめて言う。
「山田…俺は日に日にお前が大切だなって気付いた。だからちゃんと告白してから抱こうと思って大事にしてたんだ」
本当、綾は余計なことをしてくれた。
こんな場所で、山田がこんな状態のときに告白するなんて最悪な環境だよ。
「ただ、いつ言おうか考えてたらこんなことになった。こんな状況で言うべきじゃねぇんだけどこの際もう仕方ねぇか」
俺は一瞬顔をそらして、深く深呼吸をしてから山田の顔を再び見つめた。
「俺と正式に付き合って欲しい」
山田は俺の発言に驚いた顔をしていた。
2、3分沈黙が続く。
「本…当?」
山田からようやく出てきた言葉はその4文字だけだった。
「本当だ」
「俺いま頭すごくクラクラしてて、もしかしたら明日記憶無くすかも…明日また同じこと言ってくれる?」
山田のその発言を聞いて、俺は山田を押し倒した。
「言わねぇよ」
そして俺は眼鏡を外して、山田を見つめて言った。
「いいか?体中の神経を脳に集中させて記憶しとけ。今からお前のことめちゃくちゃに抱く。俺が言ったことも抱いたことも記憶を無くすことは許さねぇ。俺が好きならそれぐらいできるよな?こんなのに飲まれんじゃねぇ」
山田は俺の発言を聞いて、目を大きく開けて頷きながら応えた。
「わかった。絶対忘れない」
その姿が酔いと戦っていて必死で可愛くて、少し笑えた。
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