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1.春と終わり
卒業と一纏めにされたイベントを喜べはしなかった。
好きな人と思えるのが男ばかりだと気が付いたのは、高校生に入る直前のことだった。
桜の舞う中、卒業証書の入った筒を握りしめて親友を呼び寄せる。
意外にも女にモテる親友は、波瑠 から見ると顔は対して良くない。
というか好みではない。
波瑠から見た主観はこの際放り投げておくとして、今からやろうとしていることは幼なじみとか、親友と呼ばれる関係を壊してしまうかもしれないものだった。
女達を放り投げて波瑠の元へと来た親友ーー和枝裕二 は桜の木の下で待つ波瑠に向かって手を振っている。
手を振り返せば、裕二がゆっくり笑った。
「なんだよ、告白みたいな呼び出し方しやがって」
「うん、まあ似たようなものだし」
裕二の言葉を待つ前に、言いたかったことを口にする。
「あのさ、俺。男しか好きになれないんだよね」
「は?」
放心する裕二に追い打ちをかけるように言葉を重ねる。
「あ、安心して? 裕二のことは好きじゃないから」
「……は?」
「ああ! もちろんそう意味でだよ! 友達としては好きだよ、多分」
裕二が手に持っていた卒業証書を落とした。
だらしないなとそれを拾って渡すと、風が勢いよく吹く。
桜が綺麗に舞って、髪を片手で抑える。
ーー今日は思ったよりもいい日だったと、空を見上げた。
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