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現れた白衣02

「だりぃな、集会なんて」  終わって早々金原が愚痴を吐く。  生徒の流れに乗って、のろのろと教室に足を運ぶ。 「しかもあの類沢だっけか。あんなん女子が嬉しいだけじゃねーか」  類沢。  俺は曖昧に相槌を打つ。  まだ胸が霞んでいた。  あの男の視線に絡められたままだ。 「なぁ、金原。あいつ……なんか変じゃなかったか」 「変? どの辺が?」  返事に困る。  俺だってわからないからだ。  わからないから怖い。  教師なんて今まであしらってこれた分、初めて感じる無力感。 「いや……やっぱいい」  しかも、俺だけが感じている。  こういうのを天敵と言うのだろうか。  とりあえず、この半年は保健室には行かないでおこう。  そこは運命の悪戯って奴で、俺は保健委員をしていた。  一番仕事が少ないから、ジャンケンしてまで就いたのだ。  今じゃ敗者に譲りたくて仕方がない。  何故かって、担任が放課後こんなことを言いやがったからだ。 「保健委員……あ、紫野が休みだから宮内だけか。保健室にアルコールを取りに行ってくれないか。これから受験だし、体調を崩さない為にも消毒は大事だからな」 (知るかっつの)  だったらインフルエンザにかかった方がマシだ。  だが、掃除が終わり、屋上で悶々としていた俺に呼び出しがかかる。  宮内瑞希、すぐに保健室に来なさいだってよ。馬鹿じゃねぇの。  生まれて初めての呼び出しの不名誉さに苛つきながら屋上を出る。  格好の暇つぶし場だったが。  金原はからかいながら手を振った。 「モテの秘訣でも聞いてこいよ童貞」 「……絶対コロス」 「はは、じゃあ終わる前にオレは帰るかな」  金原が向かってくる扉を乱暴に閉じ、階段を降りる。  なんだろう。  妙にムシャクシャしている。  夏休みが終わったから。  勉強しなきゃなんないから。  違う。  保健室に行かなきゃだからだ。  何で?  類沢に会いたくないから。  何で?  それを今から知りに行く。 「失礼しまーす。呼び出された宮内です……」  そろそろ部活も終わる時間。  消毒の匂い漂うその部屋には、机に向かう類沢しかいない。 「遅いよ」  想像以上に低い声が迎え撃つ。 「……すみません」  気だるく謝り、たった一つソファに置かれたボトルを持とうとする。  その背中を押された。

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