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荒らされた日常09
ガチャリ。
鍵の隠し場は代々受け継がれてるようで、すぐに扉は開いた。
北校舎の外れにあるため、体育の授業からも見つからない。
薄暗い密室に入って、無意識に体が強張る。
こいつらは、あの男達と違うのに。
信頼できる仲間なのに。
「お、冷蔵庫健在~。瑞希、ほらポカリ飲めよ」
投げられたペットボトルを上手くキャッチする。
冷たい。
気持ちいい。
アカも受け取り、すぐに飲み始める。
「うめーな」
「勝手に飲んでいいのかよ」
「後輩のものは先輩のもの、ってな」
俺は黙ってペットボトルを握り締める。
何から言ったら良いんだろう。
まずは、座らないと。
俺の中で暴れるものを沈めないと。
「なんか、変な音しねぇ?」
気づかれる前に。
「みぃずき、携帯鳴ってる?」
悟られる前に。
ぐらりと視界が揺れて、俺は片膝をついた。
その反動で中のものが前立腺を擦り上げる。
「ふッッ……ん」
「瑞希?」
しゃがみ込んで声を抑える。
こんなこと知られる訳にはいかない。
こんなこと現実じゃない。
ブブブ。
クチャ。
「瑞希…」
違う。
そんな目で見るなよ金原。
真っ赤なんだろな。
今、俺の顔。
ヴヴ。
「わ、るいけどさ……一人にしてくん……ねぇかな」
ペットボトルを床に倒して、絞り出すように懇願する。
そしたら、忌まわしいのを取り除けるからさ。
普通に話せるからさ。
事実から逃げれるからさ。
「一人にはしないよ」
アカが緩く頭を撫でた。
もう限界だった。
「く……ぅぁああ」
俺はアカに縋って声を上げて泣いた。
アカは黙って抱き締める。
金原もそばに座る。
「ひっく……あぅ」
「なぁ、瑞希。俺らは馬鹿やるだけのダチかもしんねえけどさ、悩み位は聞けるぜ? 解決だって三人なら出来るだろ」
なぁ、とアカに促すと、彼も神妙な表情で頷いた。
俺は乱暴に涙を拭って二人をしっかりと見つめる。
今だけ。
今だけは類沢の捻り入れた道具の刺激を忘れたかった。
さっきとは違う。
周りにいるのは親友だけだ。
「みぃずき頑張ったんだな」
優しい声で言われると、余計に涙が零れた。
「辛かったな……」
きっと二人は事情を察している。
それでも、俺を傷つけまいと。
「あぁあああ――! わぁああ」
だから、安心して泣いたんだ。
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