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枯らされた友情14
「お疲れ様」
類沢は一言投げかけると、拘束を外し服を着せた。
既に下半身が全く動かなくなったオレを背負い、自分の荷物を指先にかけて保健室を出る。
朦朧とした意識の中で見た校舎は真っ暗だった。
何時だろうか。
どうでもいいけど。
行為がどの位の長さだったかなど、知ったところで救われない。
救われない。
次に意識が戻ると車に乗っていた。
隣で運転する類沢から煙草の臭いが漂ってくる。
白い息を吐きながら、彼は随分なスピードで街を駆け抜けている。
行き先はどこだろう。
類沢の家なんて最悪だ。
真っ直ぐ前を見つめる横顔からは何も汲み取れなかった。
ただ、そこには容姿の良い一人の男がいるだけなのだ。
さっきまでが嘘のように。
これだ。
これこそ恐怖の原因だ。
類沢は狂ってない。
全てが素面のうちに行われる。
だから鳥肌が立つ。
―あはは、体罰―
笑いながら陵辱する。
記憶に残して、それを悟らせない。
保健室に入った時も、瑞希の名を出したときも、彼は動揺も誤魔化しもしなかった。
むしろ挑発した。
そうして難なく乗せられたのだ。
体が傾く。
カーブに差し掛かる度、類沢はチラリと此方を確認した。
目は合わない。
買った商品が落ちないか確かめる目つきだ。
人間を気遣うものじゃない。
エンジンが唸る。
オレは静かに目を閉じた。
声が聞こえる。
「まぁ……体育でボールを頭に」
母さんの声だ。
「放課後になって大分落ち着きましたが、まだ意識がはっきりしないので今晩は安静にお願いします」
「本当にお世話になりまして、ありがとうございます」
「いえいえ。外傷は特に無いので、軽い脳震盪だと思いますよ」
スラスラ嘘が出てくるものだ。
オレは類沢の背中から下ろされ、母さんの肩に預けられた。
母さん、また酒の臭いがする。
「もう、助かりました。えっと……養護の……」
「類沢雅と申します。昨日から配属になりました。前任の田口先生の代わりです」
「あら、類沢先生。これからもよろしくお願いします」
「では」
悪い冗談を聞いているようだった。
息子を犯した男に母がこれからもよろしくと丁寧にお願いしている。
笑えない。
なんとか睨もうと目を開けると、じっと此方を見ている類沢がいた。
「お大事に、ね」
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