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立たされた境地03

 アカの一件から一週間が過ぎた。  自首したお陰で、父親は懲役二年で済んだらしい。  それでいいのか。  尋ねた俺に、アカは曖昧に笑った。 ―生きてれば、まぁいいんだ―  そろそろ冬休みだ。  センターまであと一カ月。 「今はやるしかないんだからな。遊ぶ馬鹿は見捨てるからその気でいろ。代わりに頑張ってる奴には全力でサポートする」  学年主任の如月先生の挨拶を最後に、学年集会が終わる。 「瑞希ー、進路決まったか?」 「まだ」 「マジかよ」  金原が大袈裟に驚く。 「え? 金原決まったの」 「一応はな。経済系に行きたいかなぁって」 「似合わないね」 「ちょっ、アカ。ふざけんな」  赤髪を切ったアカは、少しだけ前より明るくなった。  耳元に癖がまだ残る髪。  卒業したら染め直すと云っている。  黒髪のアカ。  見てみたい気がする。 「そういうアカはどこ行くんだ」 「おれ? おれは……就職だよ」 「マジで!」  今度は俺も叫んだ。 「そ、そんなに驚くことじゃないじゃん。びっくりしたぁ」 「どこだよ? コンビニじゃ正社員なっても厳しいんだぞ」 「なんの話だよ。携帯会社の開発部門にね、ちょっと推薦枠があるらしくてさ」 「携帯会社?」 「金属と機械には詳しいから」 「あぁ……」  俺はアカの七つ道具を思い出す。 「なに、みぃずき。その顔は」 「いやっ、お似合いだなって」  生徒の波が止まる。  ざわざわとみんなが窓を指差した。 「おっ?」 「わぁ、雪だ」  白い花びらがチラチラと。  そうか。  もう、雪が降る季節なんだ。  十二月の半ば。  余りに色々ありすぎた。  季節に置いていかれてる気がした。  冬休みは実家に帰ってみようかな。  勉強も大変だけど、美里と年越したいし。  そんなことを考えながら、図書室を出る。  毎日籠もっている。  目標も決めないまま、勉強だけ。  こんなんでいいのかな。  でも、お金かかるから大学は難しいし。  奨学金の申し込みも殆ど締め切ってしまった。  なにになりたいんだろう。  ぼんやり考える。  ガラッ。 「失礼します」 「元気ないね」  白衣を着た類沢が微笑む。  仕事が終わったんだろうか。  窓際で本を手にしていた。 「先生は、元気ですか?」 「生徒が元気ならね」  ズルい返しだ。

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