186 / 238

晒された命02

   朝霜が降りている。  寒さに手に息を吹きかける。  肩をさするが、セーター生地のせいかバチバチしてしまう。 「なんなのよ~。こんな時間に呼び出してさぁ」  有紗は広場の時計台を見る。  八時。  人通りはまばら。 「仁野さん?」  睨むように声の主を振り返る。 「遅いわよ」 「ごめんな」  蒼いジャンパーに、黒いキャップ。  デニムのパンツ。  黒いスニーカー。  なかなかセンスは悪くない。 「何の用なの、一体。西雅樹」  風が吹く。  冷たい風が。  今日はクリスマスイブ。  私は非常にご機嫌だ。  今夜こそ、センセに言いに行く。  この男の用件も大したことはない。  そんな予感に包まれていた。

ともだちにシェアしよう!