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時針が止まる時13
「忍……本当にいなくなったんだぜ。たっくん。本当にもういないんだ……あり得ねえな、こんなの。あいつ、顔にほとんど傷なかったし、だから……」
結城がオレの布団に突っ伏す。
その背中が震えてる。
「結城……泣くなよ」
それを言った瞬間結城は声を上げて泣き始めた。
嗚咽し、感情を爆発させて。
どうしたらいいか、わかんなかった。
心のどこかで冷静な自分が叱咤する。
認めろって。
けど、ナニを。
忍がいなくなった現実?
唯一愛した人が死んだこと?
もう言葉を交わせないこと?
一体ナニを、どこまで。
世界はどこまでもオレを殺そうとしてくるってのに。
どうやって耐えきればいいのかわからない。
忍がいない。
いない。
「忍が……いない」
結城が顔を上げる。
「たっくん……」
「結城。忍がいないんだ。伝えたいのに、いないんだ。忍にオレ謝ってもないんだ。沢山酷いことしたのに。忍にお礼言わなきゃなんだっ。沢山……沢山っ。けど出来の悪い芝居がずっと続いてるから、邪魔するから……忍の背中に追いつきやしない! カミサマふざけて見てるんじゃねえよっ」
「たっくん……」
支離滅裂だ。
思考さえ。
だって考えてくれ。
時針が止まったら、秒針は何周回ったって無駄なんだ。
どうして回り続けられる。
どちらか欠けたらダメなんだ。
早く嘘だと言ってくれ。
そんなの信じてもないのに。
あー。
今だけでいいから。
頼むから。
忍のそばに行かせて。
「結城。ちょっと一人にしてくれ」
結城が身を起こし、「わかった」とだけ云って出ていった。
白い扉が締まる。
なあ、もういいだろ。
忍。
出てきてくれ。
「忍」
声が病室に響く。
なんて情けない声。
鼻を啜って涙を拭く。
「もう一回だけ、夢で……」
無為。
閉じようとした目を開く。
けど、オレは弱いから。
無理矢理瞑る。
あの白い空間を思い浮かべた。
夢は、見なかった。
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