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一体なんの冗談だ17

 二十三号。  類沢雅。  なんて違いだ。  なんでその二つの名を持つことになったんだろう。  これから答えを聞けるのだろうか。  類沢は俺の肩を優しく撫でて、疲れたから横になろうかと言った。  まるで修学旅行みたいに寝ながら話すことになるとは。  俺は横向きに。  類沢は天井を見て話し始めた。 「刺激を求めてって一言でまとめると如何に愚かかわかりやすいんだけど、肉親のいない十二年間はふと立ち止まる度に自分の存在意義を考えるくらい不安定なものだった。だから外出から二日後の夜に丸めたメモの皺を伸ばして、夜中に外に出て街灯の下で何度も読み返したよ」  そこになにが書かれてあったのか。  きっと聞いても俺は理解できないだろう。  だってそれは、類沢さんだけに当てられた誘いの言葉だったのだから。 「秋倉真、覚えてる?」 「忘れられませんよ」 「そうだよね。忘れない方がいい。よりによって麻那姉さんの次の拠り所はその男だった。声をかけてきた男はその手下ってところかな。あるビルに連れていかれて、まるで施設みたいに同年代の子供が沢山いてね。違いは……全員少年だったところかな」  俺はイヤホンで聞いた類沢と秋倉の会話を思い出していた。 -随分ご立派になって……え? 稼いでいるんだろう。恩も忘れて- -恩? 僕を薬漬けにして客をとらせようとした男娼宿のオーナーに、切りたい恩もありませんがね-  濃い殺意を含んだ会話。  思い出してもあの時の類沢の空気には寒気がする。  本当に人殺しをしかねない空気。 「そう。瑞希が今考えている通りだよ。そこで僕は最悪な日々を過ごした」  頭の中を読まれはっとする。 「一つ……聞きたいんですけど」 「いいよ」 「雛谷さんと秋倉さんは、どういう関係なんですか」  数秒の間の後に類沢がこちらを向く。 「あっ、えと……駄目ならすみません」  その顔が真剣だったから、触れてはいけない気がしてしまった。 「雛谷はね」  息を吸う。  吐き出すために。

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