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俺は戦力外ですか13
カチャン。
置かれたブラックコーヒーを一瞥する。
ここは秋倉の元部下の経営している店だ。
それを運んできた人物こそ、小木という部下。
類沢や雛谷がいたころから男娼宿を共に管理していた仲間だが、今は手を引いてまともにファミレスのオーナーをしているわけだ。
もちろん、有事の時はこうして場を提供しなければならないから本人の身も潔白ではいられまい。
だが秋倉は知っていた。
小木が壁の向こうで聞き耳を立てていることを。
こういうきな臭い話をあいつが見逃すはずがない。
それに……
秋倉は鵜亥をちらりと見る。
カップに口を付けて啜るこの若い男を小木は新米の頃から憧れていた。
堺と東京という距離の隔てにも関わらず流れてくる彼の噂にいつも目を輝かせていた。
むろん業界が業界のため噂自体は輝かしくないが。
その仕事の大きさは常に注目を伴う。
過去に仲間を何人も切り捨ててきた秋倉にとって、彼の”商品以外”への気配りは尊敬ものだった。
「では、貴方の要望は?」
長い沈黙などなかったかのように穏やかに尋ねる。
今まで聞かされた話の余韻から抜けていなかった秋倉は数瞬その意味を考えてしまったほどだ。
「あ、ああ。そうだった」
「察しはついてますけどね」
いきなり遠慮のない声に冷汗が流れる。
鵜亥はまた汐野を呼んで封筒を取り出させた。
いちいち部下にやらせるところが上に立つ者らしい。
そうだ。
この男はその立ち位置に拘る男だった。
あくまで噂の範疇だが。
「前回の貴方の経営店舗の放火沙汰を詳しく調べてみたんです。浮かび上がってきた店の名前の中で聞き覚えのあるものは一つでした」
言葉を切って薄く微笑む。
眼は笑っていない。
刺すような瞳孔。
スズメバチ。
そのあだ名に相応しい。
秋倉は生唾を飲み下した。
「シエラ、ですね」
がらんとした店内に響く一言。
鵜亥は眺めていた書類をばさっとテーブルに投げ捨てる。
三人の個人情報。
三人の写真。
「シエラのオーナー篠田春哉。その親友であり№1の……類沢雅」
秋倉は無表情を保たせる。
「それから、これがまた異分子として上がってきたのですが。宮内瑞希。新人ホストの一人ですね。各歌舞伎町のブランド店が注目している理由は……この少年が類沢の想い人らしいじゃないですか」
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