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いくら積んでもあげない25

 涙目でもはっきりと答えた拓を孫のように愛しく思うのもつかの間、鋭い目つきに戻ってこう言った。 「篠田の手回しが早くともこちらの救出は最速でも明日まではかかるだろう。止血は出来たが弾が中に残っておる」 「感覚で……わかります」  そこで吟が声を落とす。 「皮肉なことを今から言うが」  拓は生唾を飲み込んで頷いた。 「この件が終わったらシエラを辞めることになる」 「え?」 「その怪我だと完治に数か月はかかる。破傷風にでもなれば日常生活ですら困難だろう。岸本忍を助けるために宮内瑞希は自らを犠牲にして、その宮内を助けるためにお前さんが脚を犠牲にしたんだ」  薄暗い無機質な部屋に、重厚な声が木霊した。  拓は目線を彷徨わせたが、すぐに頷いた。 「そっすか。オレ、トップに入る宣言しちゃってまだ一週間も経ってねえんすけどねっ。情けねえっすねえー。でも、もしかしたら治ってから復帰は出来るかも知れないんすよね? ホストってお抱えの凄腕医者がいるって話だし、オレ瑞希が帰ってきたら悪い組織に作った借金返すだけ働かねえとだし……ふ、ふふ。へーき、へーき。頑張りますよ、オレ。その事実はちゃあんと頭に入れときます」  へらへらと。  本当にわかってるのか。  そう問い詰めたくなるような笑顔で。  しかし、吟はその奥に強さを感じた。  これが、古城拓を採用した篠田の理由か。  類沢も気に入っている訳がわかった。  宮内瑞希にもまたない素質だ。 「く、くく……」 「おじいさん? あっ、すみません吟さん」 「おじいさんで構わんよ。全く、人のペースを乱す天才とは聞いていたが、少し後悔してしまったわい」 「何がっすか?」 「類沢より先に、見つけたかったとな」  古城拓という存在を、な。  だが、その言葉が拓に伝わることはなかった。  それでも照れて笑う姿に、言葉にする意味はないと悟った。 「類沢、さっさと片付けてしまえよ」  重い扉に向かって、吟は呟いた。  今頃吟さん「さっさと片付けてしまえ」とか思っているんだろうな。  コツコツと廊下を進みながら類沢はぼんやり考えていた。  前に汐野、後ろに秋倉。  左右には屈強そうな男たち。  僕一人にどれだけ警戒しているんだか。  ボディチェックもろくに出来てない癖に。  さっき篠田に送ったメールはちゃんと届いただろうか。

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