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どんな手でも使いますよ19

 立ち去りかけた圭吾が少し上からものを言うように続けた。 「あーそうそう、秋倉さん。今どきドアの暗照キー、番号で八桁とかセキュリティ甘いです。指紋跡も残ってましたし、静脈登録をお勧めしますよ」 「あぁ?」 「じゃあオレはこれで」  タタッと軽快に夜道に消えた圭吾をいつまでも秋倉は見送る。 「なんであいつ……」 「あの男はケイの息子の金原圭吾。苗字くらい聞き覚えあるでしょう」 「まさか……」  ジャラン、と手錠を鳴らしながら首を掻く。 「恐ろしいねえ」 「GPSか? ここに来るのは予定外のはずで誰も知らな……」 「予定外? ははっ、あれだけ態勢整えといて?」 「お前に執着していることを知る人間は少ない」 「そうかな。小木とか簡単に情報売るかもよ。高値なら。まあケイから貰ったのかもしれないけど」  そこで思い出したように静まり返った自宅を振り返る。 「一体誰が来ているんだ」 「わざわざあいつを通しているんなら、あんまり期待は出来ないお茶会になりそうだね」 「お前は肝が据わっているな」 「貴方が頼りなさすぎるんですよ。自宅前で何をうだってるんです、僕をここに連れてきたのは庭でも見せて自慢するためですか」 「あーっくそ、早く入るぞ」  がしがしと頭を掻きながら乱暴に入っていく秋倉の後ろに続く。  今なら簡単に逃げれるんだけど。  手錠を見下ろしながら一瞬そんなことを考えたが、あのケイの息子だ。  周辺に見張りも用意してあるんだろう。  闇に沈んだ道路を一瞥して、足を踏み出す。 「……二人、ね」  灯りのつけられた廊下を進みながら、妙な胸騒ぎを感じていた。  今までの岸本忍や、瑞希と鵜亥の騒動など比べ物にならないような予感。  バカげてる。  今ここにいる意味を思い出せ。  瑞希のためにみんなが動いているんだ。  要件が済んだならすぐに此処を出て、帰らなければ。  ギシギシと、踏みしめる足音が耳に響く。  リビングに近づく。  先に入った秋倉が、一瞬で吹き飛ばされるように戻ってきた。  つい足を止めた目の前で背中から壁にぶつかる。  頭を強打して、そのまま秋倉がずるずると倒れた。  思考が停止する。  何が起きた。  何で、秋倉が、撃たれた?  血は出ていない。  麻酔弾か。  そこまで考えたところで出てきた影に腕を引かれた。  細く、未熟な手に。 「よかった、来てくれて」

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