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kiss10

 目を開けると、類沢に抱き締められていた。  行為のままの姿で。  気絶してしまったのか。 「起きた?」  穏やかな低い声。  類沢の顔がまともに見られない。  胸元にすり寄る。  その背中に手が回る。  あ。  心臓の音がする。  ゆっくり。  早く。  その音が心地いい。 「また寝るの」 「先生の心臓を聞いているだけ」 「そんなの聞いても何もないよ」 「落ち着くんです」  目を瞑る。  トン……トン…  生きている音。  俺は生きている。  そう感じさせてくれる。 「あのさ、瑞希」 「はい?」 「くすぐったい」  俺が笑うと、類沢は無理やり顔を起こさせた。  怒ってはない。  俺は頬に触れる手にキスをする。 「初めてですね」 「ナニ?」 「こんなに幸せに目覚めるの」 「悪かったね」  軽い口調で言う類沢に噴き出してしまう。 「別に先生のせいとは言ってないのに」  布団の中で、足を寄せる。  類沢の長い脚が絡む。 「ただ……嬉しいんです。こういう痕の一つ一つも」  右腕を上げ、紅い円を眺める。 「傷痕だって先生が消してくれる」  類沢は黙ってその手を取り、優しく握った。 「瑞希の手は小さいね」 「先生が大きいんです」  大きいのに、細くて、綺麗。  俺のとは別物。  包んでくれる。 「そういえば先生。さっき思い出したんですけど」 「ん?」 「こないだ俺のブラウニーは食べてましたよね」  クス、と笑われる。 「チョコくらい食べられるよ」 「やっぱり騙してたんですか……」  胸板に頭を押し付ける。  温かい。 「類……」  閉じた目に言葉が詰まる。  相変わらず、寝息すら立てない静かな眠り。  俺は握られた手をさらに絡ませた。  寝顔を近くで見るのは初めてかもしれない。 「類沢先生。もう、先生とは呼べなくなっちゃいますね。俺卒業したし」  じーっと見ていると、また熱が上がってくる。  パサリと流れた髪を掻きあげ、俺も目を閉じた。 「もし良かったら……名前で呼んでもいいですか」  照れて笑った俺の額に、キスが落ちる。 「……いいよ。瑞希」  ふふ、と笑いながら目を合わせる。 「おはようございます、雅さん」  愛してる、はまだ先の話

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