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touch04

「なんもないで」  男達がやっと手を離す。  俺は蹴り上がるように勢い良く立ち、背広を正した。 「護身用もなにも持たずに運んでるとは」 「途中で捕まったら言い訳しようがありませんからね」  鵜亥は大袈裟に目を見開き、高らかに笑った。 「はっはは……面白い男だな、フラン。それだけ危険物を運んでおいて自分がかわいいか」 「お受け取りくださいますね」 「まぁ、そう焦るな」  ケースを拾い、鵜亥が中身を確認する。 「確かに」 「代金は指定された口座に入れてください。失礼します」  ガッ。  目の前の扉を腕で塞がれる。  見ると初めの男。 「……なんです?」 「お前の取り分はええんか」 「雇い先から戴きますから」 「離してやれ、汐野」  素直に腕が引っ込む。 「どうも」 「また貴方に頼もうか」 「指名制はありませんから」 「はははは、そうつれなくするな」 「失礼」  今度こそ部屋を出る。  長居はデメリットしか生まない。  コンクリートに囲まれた階段を下りる。  踊場に来たとき、駆け上がってきた青年とぶつかった。  小柄な青年は派手にこけて、壁に激突する。  手を差し出すが、払われた。 「触んなや」 「立てるんか」 「……ッ」  足を挫いたんだろう。  辛そうに顔をしかめる。  無理やり起こした。  そして、その軽さに目を見張った。  まだ中学生じゃないか。  ほっそりとして、小さい。  顔を見下ろすと、悔しそうに赤らめて逸らされた。 「大丈夫やって」 「何階に向かうんや?」 「……そこの事務所や」  見ると、今出て来た部屋。  溜め息を吐き、階段を上がった。  青年に肩を貸したまま。  ガチャン。 「おっ。また戻って来たで」 「そちらの青年をお届けに」  鵜亥が煙草を片手に現れる。 「巧?」  サァッと青年が青ざめた。 「その……鵜亥さん、ちょっと転んだだけで」 「怪我、したのか」  ブンブンと首を振る巧という青年。  俺の肩から手を外し、気丈に振る舞うがよろけている。  鵜亥が引き寄せ、首筋を撫でた。 「んんッ……」 「そんなに痛そうにして、すぐに横にならないと」 「大丈夫やから……ほんまに」  怯えてる?  俺の目線に気づいた鵜亥が微笑む。 「届けてくれてありがとう。さ、運び屋様がお帰りだ」

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